思想新聞2002年5月1日【ニューススコープ】
最近、共産党が何かと「注目」されている。始まりは、2月13日の衆院予算委員会でのこと。共産党の佐々木憲昭衆議院議員(東海・比例 北海道出身)が、北方四島の国後島に外務省が建設した宿泊施設が「ムネオハウス」と呼ばれ、鈴木議員の個人的な功績になっていると指摘したのである。「現地でこの施設は、鈴木議員が作ったと言われている。ムネオハウスと呼ばれ、食堂の壁には鈴木議員の写真まで飾られているが、これは異常だ」と述べ、さらに、この施設建設を鈴木議員の後援会幹部が経営する北海道内の建設会社が受注していると指摘し、「税金の私物化としかいいようがない」と批判したのである。
アフガン復興支援国際会議(1月21、22日東京開催)への特定NGO参加拒否問題に関する質疑を中心とする予算委員会で、質疑内容を鈴木議員と外務省との関係に拡大しての関連質問だった。これに対し小泉首相は「個人の寄付ならともかく、そのように使われているようだったら、よく調査しなければならない」と答え、解明に積極姿勢を示した。
国会の焦点は一転し、NGO参加拒否問題から政府開発援助(ODA)などにからむ利権問題に移っていき、続く2月20日、鈴木宗男議員に対する参考人招致の質問で、佐々木憲昭議員は外務省の秘密文書を持って追求したのである。共産党は「機密文書を高く掲げるその姿は、まさに平成の遠山金四郎」(赤旗3月2日付)と自画自賛し、マスコミも大きく取り上げ、国民も共産党に「注目」したのである。
参考人招致質問後、23、24日の2日間だけで機関紙「赤旗」の新規購読申し込みは全国で約6400部(日曜版も含む)を数えたという。結果は地方選挙にも現れた。2月17日投票の東京都日野市・市議会議員選挙では、筆坂秀世書記局長代行らが現地入りするなどして、力を入れたにもかかわらず、5人の現職候補者のうち再選は4人と苦戦している。
参考人招致の質問が行われた20日の後、24日に行われた東京都町田市議選、青森市議選では、それぞれ5人の候補者が全員当選した。影響は明らかである。
問題の指摘は評価されても、腑に落ちない点がある。共産党は、どこから外務省の「秘密文書」を手に入れたのか、ということだ。外務省首脳は「公務員の倫理上の問題もある」と語り、「官僚の守秘義務はどうなっているのか」(古賀誠・自民党前幹事長)と指摘し、共産党への情報漏洩ルートについて問題視する声を上げた。「目的のためなら手段を選ばず」がまかり通る世の中は基本的には是認できない。
共産党は「いいわけ」した。3月8日付「赤旗」には「衆院第一議員会館の佐々木議員の部屋に、『親展』の速達で封書が届けられたのは、2月20日の朝。鈴木議員を出席させた衆院予算委員会の参考人招致の当日でした」とある。13日の佐々木議員の質問内容からすれば、すでに「秘密文書」は手に入っていてなされたのではとの思いはどうしても拭えない。となれば入手方法によっては「事件」ともなりうる性格のものである。共産党の説明は、「いいわけ」的であった。また、参考人招致当日の「速達」が本当であれば、共産党の「自画自賛」も滑稽である。
外務省は共産党の提示した「秘密内部文書」が本物であること確認した。小泉首相の指示もあって、3月11日の鈴木議員証人喚問前に、外務省文書がかつてないほど野党側に提供され、共産党は「迫力喪失」となったのである。
<降ってわいた秘書給与問題>
共産党の「はしゃぎ」も長くは続かなかった。突如鬼門の「秘書給与」問題が急浮上してきたのである。共産党にとっては触れられたくない「傷」である。『週刊新潮』(3月28日号)が報じた、辻元清美前議員・政策秘書給与詐欺疑惑は、本人の対応の拙さもあって追いつめられ、3月26日には議員辞職となった。「指南役」をめぐって土井党首秘書・五島氏、さらに党首本人への疑惑も残ったままだ。
火の粉は共産党にも降りかかった。予想通り(1昨年2月にも告発している)共産党国会議員の公設秘書だった兵本達吉氏ら2人が4月5日、同党の松本善明代議士ら2人を政治資金規正法(寄付の斡旋制限)違反と詐欺などの容疑で東京地検に告発したのである。告発状によれば、2人は20年近く同等国会議員の公設秘書を務めたが、採用当初から給与の一部を強制的に寄付させられたという。この制度は現在も、維持されているという。
「共産党では秘書の給与が党に天引きされるんです。本部職員の給与体系で支払われるので、実際に国から支給される額より少なくなる。私は国会議員の秘書だったが、ただの一度も院からの給与明細書をみたことがないし、給与袋を手にしたこともない」「平均ピンハネ率は47.1%です。25年間の秘書人生で1億円弱は党に引き抜かれました」(『週刊新潮』4月11日号)と兵本氏は述べる。秘書給与が秘書本人に渡っていないという点においては、社民党どころではない大がかりな仕組みを共産党は作っているのである。
この告発に対して共産党の筆坂秀世書記局長代行は「共産党の秘書は給与の一部を党に寄付していますが、もちろん合法適正に処理をしています。お金は秘書団の共同の費用としてプールし、電話代や旅費、コピー代、資料代などにあてているんです」と語る。しかし、公設秘書は特別職の公務員であり、給与は各院で本人に渡すのが原則なのである。共産党の言い分に説得力はない。善戦したとの評価もあろうが、京都府知事選の共産党系候補者敗北の原因の一つは、秘書給与問題であったと言っていい。
4月11日、共産党は党所属国会議員の公設秘書給与について、これまで衆参各院から党国会議員団の口座に一括で振り込まれていたのを改め、5月から各秘書の個人口座にまず全額振り込む方法に改める方針を決めた。「より誤解を招かないようにするため」という。
しばらくして、共産党は「2匹目のどじょう」狙いにきた。またまた「秘密文書」暴露である。志位和夫共産党委員長は4月12日、衆院第一議員会館会議室で、機密費(内閣官房報償費)の使い道を記した文書、出納帳が初めて明るみに出たとのふれこみだ。加藤紘一氏が官房長官の任にあったときのことだという。信憑性が疑われたが、志位和夫委員長は、加藤紘一事務所の出したコメント「政府は官房機密費の具体的な使途について一貫して公表していないと思います。従って、今回の指摘につきましてもコメントは差し控えさせていただきたい」との内容を「事実上認めてしまっている」(『週刊文春』4月25日号)証拠と強引に解釈している。後にこの「文書」の存在と内容は、1994年9月5日付の「赤旗」にも掲載されていたことが判明。「今頃何らかの意図を持って二番煎じ的に出されたということか。共産党の真意はわからない」(山崎拓自民党幹事長)と指摘され、すっかり興ざめの感がある。
これを京都府知事選挙の前に出すことは、あまりにも意図が見え見えになるために控えたのだろう。いずれにせよ、攻めよりも逃げの姿勢。少しのプラスポイントもすぐさまもっと大きなマイナスポイントでかき消されてしまう。完全に「ツキ」から見放された共産党である。


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