国際対テロ戦線を弱めるな
思想新聞2002年12月15日号【1面TOP】
国際貢献として不可欠P3C哨戒機も考慮せよ

テロ対策特別措置法に基づく海上自衛隊の支援活動の一環として政府は12月中旬にもイージス艦をインド洋に派遣することを決めた。これは国際テロ根絶のために当然のことであり、本来ならば昨秋、支援を始めた初期段階から投入すべきだったといえる。今、派遣の決断を下したのは、米国がイラク攻撃に踏み切った場合、インド洋に展開している米部隊がペルシア湾に移動し警戒・監視能力の低下が懸念されるからだ。左翼勢力は集団的自衛権行使に抵触する恐れがあるとして派遣に反対しているが、こうした反対論は国際対テロ戦線を弱めようとするテロリスト同調論にほかならない。
イージス艦派遣は対テロ国際協調から見て遅きに失しても批判される筋合いはまったくない。
第1に、イージス艦はテロ特措法に基づく従来の任務につくのであって何も新たな任務が付与されたわけではない。
同法に基づく対テロ掃討作戦への海上自衛隊の後方支援活動は、過去1年間で米軍に131回、英軍に9回の計140回の燃料補給を行い、日本が無償で提供した燃料は23万4千キロリットル、86億円分にのぼっている。現在、インド洋北方地域には補給艦「はまな」「とわだ」と、補給艦の洋上補給活動を護衛する護衛艦「ゆうだち」「さみだれ」「ひえい」の計5隻が後方支援活動にあたっており、こうした支援活動は高く評価されるべきものだ。イージス艦はこれら護衛艦の一隻と交代して派遣されるわけで、その任務である補給艦護衛に変わりはなく、したがって批判されるべき理由はない。
第2に、情報収集と防空能力に優れるイージス艦が派遣されることによって、より安全かつスムーズな洋上補給活動が可能となり、国際対テロ戦線が強化されることになるのみならず、海上自衛官の安全確保のうえでも歓迎されるべきことだ。
これまで海上自衛隊は給油に際して、その度ごとにいちいちヘリコプターを飛ばして周辺海域捜索を行い、安全確保をはかってきた。これは大変な労力と神経を使い、長期戦となってきた現在、限界にきている。
これに対しイージス艦は、最新鋭レーダーシステムを装備しており情報収集と防空能力が抜群である。目標を探知するレーダー性能が優秀なので同艦に搭載する対空ミサイルSM―2は射程170キロで、他の護衛艦の対空ミサイルの10倍の能力を有している。しかも「リンク11」という米軍艦船と共通の情報ネットワークシステムを備えており、米軍と情報を共有することで、的確に対テロ後方支援活動に従事することができるのだ。
加えてイージス艦は冷房設備を完備しており、過酷な条件下のインド洋であるだけに乗組員の健康管理上にもメリットがある。長期戦にうってつけといえる。
第3に、米軍と情報を共有化することが集団的自衛権行使に抵触する恐れがあり憲法違反であるとの批判があるが、こうした批判はまったく当たらない。
そもそも、わが国は日米安保条約に基づいて日米両国が共同対処能力を向上させるための一環として情報の共有化を進めてきた。したがって現在派遣されている護衛艦も情報ネットワークシステムを搭載している。米軍の後方支援を行う場合も情報共有化のメリットを生かすべきであって、これを敢えて切断する理由はない。
本来、自衛隊の対テロ国際協調は集団的自衛権行使として参加すべきであると我々は考える。だが、政府は「集団的自衛権は憲法上保持しているが、行使は違憲」とする歪曲した憲法解釈に縛られて「行使」に抵触しないように神経質になっている。こうした態度ははなはだ好ましくない。国際法(国連憲章51条)が集団的自衛権を国家の固有の権利と規定している以上、保持も行使も合憲というのが国際法からみた本来のあるべき解釈である。
とはいえ、政府解釈に則っても情報共有化が「武力の行使の一体化」に該当することはなく、「行使」に抵触すると判断するのは過剰反応である。たしかにイージス艦は情報収集能力にすぐれており、それが米軍に伝えられても、その情報だけを頼りに米軍が武力行使することはあり得ない。米軍自らの情報に基づいて行動するのが軍事的常識である。
イージス艦の優れた機能は主に防空情報とそれに基づく防空能力であり、したがって「専守防衛」艦船である。仮にイージス艦が得た情報で米軍が行動したとしても、それはテロ行為に対する自衛行動が主になる。とすれば、テロ行為を日米協力で防止したことになり歓迎されることはあっても非難される筋合いはどこにもない。対テロ国際協調をびくびくして行うこと事態がおかしな態度なのである。
第四に、米国は対イラク攻撃を始めた場合、アフガニスタン沖に展開している米艦船の多数がペルシア湾に移動、アフガンでの対テロ戦線が手薄になることが懸念されている。イージス艦の派遣によってこの空白が埋められるなら、対テロ国際協調からいっても歓迎されるべきことである。
現在、アフガン沖のインド洋(北アラビア海)には米艦船が約25隻派遣されている。対イラク攻撃に際して、このうち一個空母戦闘群(約10隻)と強襲揚陸部隊(6~8隻)がペルシア湾岸西岸に移動すると見られている。その結果、北アラビア海にはフリゲート艦など7隻前後しか残らないと見込まれている。そうなれば当然、アフガン沖が手薄になるのだ。
そこで11月中旬に開かれた日米調整委員会で、米国は【1】P3C哨戒機や空中警戒管制機(AWACS)の派遣【2】イージス艦の派遣【3】フランスやドイツなど米英艦船以外の対テロ作戦参加国への燃料補給【4】基地整備用重機をタイからアフガン周辺国へ海上輸送する輸送艦の派遣――の4項目について日本側に要請している。
いずれにしても燃料補給する活動海域が広がることは確実で、より一層、警戒監視の重要性が増すことになるのだ。だから、この時点でのイージス艦派遣が不可欠となっているといえる。
米国のイラク攻撃に備えるのは日本の当然の責務である。米国がイラクを攻撃するかどうかは、イラクの国連査察への協力いかんに掛かっている。米国の軍事的圧力がイラクの大量破壊兵器開発を阻止する大きな力となっており、それがなければイラクは容易に同兵器の開発を行うだろう。査察に非協力なら対イラク軍事行動を国際社会は容認することになる。その意味でも日本は米国の対イラク軍事圧力に協力すべきであり、イージス艦派遣はその一環として評価されるのである。


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