国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

防衛問題懇発足「新たな脅威」への対応めざす

【思想新聞2004年6月1日号】ニューススコープ

スパイ防止法が不可欠
武器輸出三原則の是正も

 新しい日本の防衛政策の作成を目指して小泉首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」が4月末に発足した。同懇談会は今秋に指針をまとめ、政府が年内に策定する「防衛計画の大綱」に反映させることになる。すでに政府は昨年12月に安全保障会議でミサイル防衛(MD)システムの導入を決定しているが、「新たな脅威」からわが国の平和と安全を守るには防衛政策の抜本転換が不可欠となり、懇談会では幅広く論議を深める。だが、最近の防衛論議からすっぽり抜け落ちているのが情報戦への対応、なかんずくスパイ防止法制定である。防衛政策の問題点を探ってみた。

 防衛態勢づくりが着々と進んでいることは間違いない。衆院は5月20日、国民保護法案など有事7法案を可決し参院に送付し、同法案は今国会で成立することが確実となった。また自公民3党は大規模テロなどの緊急事態に対処する緊急事態基本法を来年の国会で成立させることを決めた。
 有事法は国民の生命と財産を守る国家にとっては、なくてはならない基本法。本来ならば、自衛隊創立と同時に成立させておかねばならない。ようやく昨年、外国からの武力攻撃に備える「武力攻撃事態法」など有事三法が成立。今回、国民保護法制や自衛隊支援法制、米軍支援法制、捕虜取り扱い法制、非人道的行為処罰法制などが成立する見通しで、これで有事法制がほぼ整備される。
 こうした法整備は国家の安全保障の基礎となるものだが、これとともに不可欠なのが防衛力の整備である。とりわけ今日、
「新たな脅威」への対応が焦眉の急だ。冷戦時代には大国間の緊張が最大の脅威だったが、今では国際テロ集団や「ならず者国家」が世界の平和を脅かす可能性の方がはるかに高く、これが「新たな脅威」(平成15年版防衛白書)と呼ばれる。それへの備えが大きな課題となっているわけだ。
 たとえば、北朝鮮は核開発を公然と推進し、日本全土を射程に入れるノドン・ミサイルを130基以上も配備するなど、日本の安全を著しく脅かしている。従来の抑止概念では、日米安保条約によって米国が持つ核抑止力が有効に機能し、他国は日本にミサイルを撃ち込めないというものだったが、こうした概念はもはや通用しない。そこで米国はMDの促進を同盟国に呼びかけている。

今秋をめどに指針づくりに
 このような「新たな脅威」に備えるには防衛政策の抜本的転換が迫られる。それを確立するために年内に新しい防衛計画の大綱を作成することになっており、防衛庁は2年半にわたって検討を重ねてきた。だが、今回の大綱は法整備の面から防衛力に至るまでトータルなビジョン作りが必要で、防衛当局だけに任せておけない事情がある。
 こうしたことから小泉首相は防衛問題懇談会を設置し、抜本的改革案づくりに臨むことにした。同懇談会は荒木浩・東京電力顧問を座長に五百旗頭真神戸大学教授、西元徹也元統幕議長、柳井俊二前駐米大使ら10人からなり、今秋に答申を出し、それを新防衛大綱の計画に盛り込む予定だ。
 4月27日の初会合では小泉首相は「冷戦時代と異なり、大量破壊兵器の拡散、国際テロなどへの対応が大きな課題」と指摘し、従来の防衛計画の考え方を見直すことを強調した。今後、MDの構築や戦車など旧来型装備の大幅削減、国際貢献活動の本来任務への格上げなどを論議することになった。
 論議ではこうした防衛力そのものの見直しとともに次の諸点が問われることになるだろう。
 第一には、武器三原則の見直しだ。すでに日米両国はミサイル防衛の共同研究を行っているが、MDに日本の高度技術を生かし、研究から早急に具体的配備へと移行させるには、どうしても武器輸出三原則の見直しが必要になる。こうした行為が「部品」を米国に輸出したとして三原則に抵触する恐れがあるからだ。
 武器輸出三原則は67年に佐藤内閣が打ち出したもので①共産圏②国連決議による輸出禁止国③紛争当事国や恐れのある国・への輸出を禁じたもので、MDはまったく想定外だ。少なくとも不毛な三原則を見直し、自国の安全保障のための輸出は可としておかねばMDは前進しない。

集団的自衛権の行使も不可欠
 第二には、集団的自衛権行使を違憲とする政府解釈を改めることだ。北朝鮮からミサイルが飛来する場合、ミサイル発射を探知し迎撃するまでの時間はわずか数分。そのミサイルが米国向けか日本向けかの判断はきわめて難しく、目標に関係なく日本列島に向けて発射されれば、即座に迎撃できる態勢を作っておく必要がある。
 また米国はMDを世界規模で展開しようとしており、日米同盟としての運用も視野に入れておかねばならない。それには集団的自衛権行使を合憲としておかねば効果的運用ができなくなる。
 第三には、情報戦への法整備である。新防衛計画の大綱では「新たな脅威」に対処する自衛力の在り方を明確にするが、こうした「新たな脅威」は元来、「間接侵略」と呼ばれてきたことを想起しておく必要がある。間接侵略には必ずその前哨戦としての情報戦、すなわちスパイ工作が先行し、その上でテロやゲリラ戦が仕掛けられるのが通例だ。だから、これを防ぐ法整備が不可欠となり、それがスパイ防止法であることは言うまでもない。

アルカイダ幹部潜入も放置する
 これは有事態勢というよりは平時態勢と言える。昨年、政府は北朝鮮のミサイルを監視する「偵察衛星」を打ち上げたが、情報収集してもそれを分析・保全する能力と態勢がなければ、情報は「インテリジェンス」として生かされない。
 しかし、これまでわが国は情報分析能力の構築を怠ってきたばかりか、保全もスパイ防止法も整備せず情報戦を軽視してきた。また、パキスタンのカーン博士を中心にした「核の闇ネットワーク」の発覚で明らかなように、ならず者国家や国際テロ組織の動きを防ぐには情報収集と分析・保全が不可欠となっている。
 五月にドイツ捜査当局に逮捕された国際テロ組織アルカイダのメンバーが9・11事件後の02年から03年にかけて4回にわたって偽装パスポートで入国、新潟市のマンションを拠点に日本国内で活動していたことが判明した。なぜアルカイダ幹部の入国を阻止できなかったのか、これも情報戦の敗北と指摘されている。
 これを受けて警察庁は全国の警察本部に情報収集を強化することを指示したが、情報は国内だけで収集しても限界があり、国際的な情報収集が不可欠となっている。だが、日本国内にしっかりとした情報管理体制(スパイ防止法)がなければ、他国は情報漏れを恐れて簡単に情報提供をしてくれない。国際テロ・ネットワークの徘徊を許さないためにもスパイ防止法の制定が必要になる。
 いずれにしても防衛懇は「新しい脅威」に対抗する「新しい防衛態勢」作りを模索することになるが、防衛政策をめぐる旧弊を廃して抜本的改革に着手すべきだろう。

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