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「自衛隊の権限強化」方針を歓迎する

この記事は2014年2月5日に投稿されました。

政府は2月4日、武力攻撃に至らないような緊急事態でも自衛隊が対処できるよう、自衛隊法を改正する方針を固めた。自衛隊に領域警備任務と武器使用の権限を付与するという。尖閣諸島の領有権を中国が不当に主張し、武力進攻の危険性が高まる中、自衛隊の権限を強化する意味は非常に大きい。
 中国が尖閣諸島への武力侵攻を行うと仮定したシミュレーションが各方面でなされているが、初めから本格的な軍事行動を起こすというシナリオはほぼ見られない。たいていは漁民に偽装した重武装集団がまず上陸し、その後に「民間人を守るため」と称して警察力、軍事力が侵攻するという想定だ。自衛隊が出動して武力行使を行うには「組織的・計画的な武力攻撃」が認められなければならず、中国もそれを熟知している。「警察力では防げず自衛隊は出動できない」というグレーゾーンを巧みに活用する可能性が極めて高いからだ。今回の政府の方針は、こうした隙を埋めるための実用的な案であり、評価できる。

隙間のない防衛力で抑止力を

安倍首相は4日、首相官邸で開かれた政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」に出席し、次のように挨拶した。
 「我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、このような法的な「隙間」があるとすれば、我が国に対する攻撃を未然に防ぐという「抑止」が機能しなくなります。それは国民を大きな危険にさらすということでもあります。こうした現状では、我が国の周辺の安全保障上の脅威に対応するために備えが十分とは言えません。我が国の安全保障に関する法的基盤をシームレスなものとし、あらゆる可能性について国民の生命と安全を考えた万全の体制を構築していくことが大切であります。」
 もっともな意見だ。これまで日本は、戦後70年近くの期間、一度も戦争を経験していない。もちろんその最大の原因は平和憲法にあるのではなく、米国の抑止力が強力だったからだ。ベトナムでは1974年に永興島を、フィリピンでは1995年にミスチーフ礁を中国に奪われた。いずれも米軍が撤退してすぐの事件だ。今や永興島には中国の軍事用の滑走路が建設され、ミスチーフ礁にはヘリポートなどの建造物が設置されている。日本はこれまで米国の傘によって守られてきたが、今後さらに中国の台頭が進み、米国の地位が低下すれば現状がいつまでも続くとは限らない。それに備え、隙間を埋めていく作業は着実に進められるべきである。

時代錯誤では国民を守れない

米国の「内向き」志向が目立っている。1月の一般教書演説では大半が国内経済について述べられ、外交や安全保障に触れたのは後半のごくわずかな部分だった。中国と北朝鮮の脅威については全く触れられなかった。これではオバマ大統領の「アジア重視」がどれほど本気なのか疑わしい。今後は、米国による抑止力が低下していく可能性も十分にある。安全保障政策を議論するうえでは、この大前提に対する理解が必要不可欠だ。
 昨年暮れの特定秘密保護法の制定に際して反対論者からは、「戦前の日本に戻そうとしている」「軍国主義にする気なのか」などと言った批判が見られた。時代錯誤も甚だしい。そもそも法令の内容に軍国主義化する可能性などないのだが、それにしてもなぜ今70年前の事象を持ち出さなければならないのか。昨年北朝鮮では穏健派の側近が粛清され、中国は日本の領土上空を含む防空識別圏を設定した。今我々が直視すべきは、「緊急事態」と言ってもいいほどに緊迫した「現在の」アジア情勢と国内体制である。
 安全保障ほどのリアリズムはない。対策を誤れば国民の生命や財産が失われていく。盲目的、センセーショナリズムな時代錯誤はやめ、いかに抑止力を効果的に高めていくか、建設的な議論を期待したい。

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