思想新聞2003年11月1日【主張】
北朝鮮の核問題はブッシュ米大統領が「安全保証」問題に言及したことで新たな動きを見せている。
10月17日の日米首脳会談で、ブッシュ大統領は「不可侵条約には応じられないが、北朝鮮の安全の懸念について、どういう解消の方法があるのか検討を進めたい」と述べ、北朝鮮に「安全の保証」を行う考えがあることを表明。その後、APEC(アジア太平洋経済協力会議)が開催されたバンコクでの米、中、露、韓、日の各首脳会談でも米国の「安全保証」がテーマになり、5ヵ国首脳はそろってこれに賛意を示した。これで今後、米国が提示する北朝鮮に対する「安全保証」が六カ国協議の焦点になってくるのは間違いない。
そこで我々は北朝鮮の「安全保証」について明確な指針を確立しておく必要がある。その際、何よりも重要なことは、北朝鮮の安全に関わる問題は即、日韓の安全に関わる問題であるがゆえに、米国は中露や北朝鮮と話し合う以前に、日韓と十分な詰めを行っておかねばならないという点である。つまり、日韓米の結束が大前提になるということだ。
北朝鮮は米国に対して「敵視政策をやめて、米朝不可侵条約を結べ」と主張している。それが北朝鮮のいう「安全保証」である。これに対して米国は不可侵条約の締結はできない相談としており、多国間(周辺5ヵ国)で別の何らかの「安全保証」を文書化しようと考えている。それがブッシュ大統領が示唆する「安全保証」である。
ここでまず第一に、我々は米朝2国間だけの「安全保証」はあり得ないという共通認識を持っておく必要がある。なぜなら現在、南北を分断している軍事境界ラインは韓国動乱すなわち「朝鮮人民軍プラス中国義勇軍」対「韓国軍プラス国連加盟16カ国軍」の戦いにおける休戦協定(1953年7月)によって、もたらされているからである。つまり、米朝2国間での「安全保証」はそもそも論外なのである。このことを北朝鮮は肝に銘じておくべきだ。
したがって北朝鮮が「安全保証」を言うなら本来、国連安保理を舞台で行うべき性質のものである。6カ国協議はその前段階として韓半島に関わる周辺4カ国が参加して行われているのであり、仮に6カ国協議が進展しなければ論議の舞台は当然、国連安保理に移さざるを得ない。このことも北朝鮮は自覚しておくべきだ。
仮に安保理で北朝鮮が核開発を放棄しない態度を取れば、国連憲章に従って・経済制裁→・軍事制裁へと粛々と移行していくまでだ。それが国際社会のルールであることを国連加盟国である北朝鮮は想起しておくべきである。むろん日本もその道筋を認識しておく必要がある。
だからこそ北朝鮮は安保理の前段と位置づけられる6カ国協議を軽視することがあってならないのだ。
米国が示す「安全保証」の中身は今のところ定かでない。しかし、さきの北京協議で米国は・北朝鮮を敵視しない・北朝鮮の体制転換を目的としない・侵略をしない――との考えを明確に示している。これを不可侵条約という議会の批准(現段階では米議会が批准するのは不可能)と法的拘束を受ける形ではなく、周辺5カ国が文書化、署名する形式で保証しようとするのがブッシュ提案の趣旨である。
その際、その「安全保証」は他国の安全を脅かすものとなってはならないことは論を待たない。したがって、日米および米韓安全保障条約を拘束する内容であってはならないということが重要な視点となる。
つまり、北朝鮮は「安全保証」を根拠に、韓国と日本に対して在韓・在日米軍撤退や偵察衛星の配備あるいはミサイル防衛システム導入の中止を迫ることができない。また米中露もそれを迫らせない「安全保証」でなくてはならない、ということである。それは日米および米韓安保条約は他国からの侵略に防備するためのものであって他国を侵略するためのものでないからだ。「安全保証」は他国の防衛政策をけっして拘束してはならないのである。
核開発放棄は当然の前提だ
加えて「安全保証」の前提として北朝鮮の核開発放棄があることは言うまでもないことだ。とりわけ核放棄の検証、既存の核施設と核物質の解体・破棄が確実かつ不可逆的に実行されなくてはならない。つまり、北朝鮮がNPT(核不拡散条約)に復帰し、追加議定書(無差別査察の同意)に調印してIAEA(国際原子力機関)の完全査察を受け入れなくてはならない。これは何も北朝鮮にとっては屈辱的な内容ではない。故・金日成主席が行った南北非核宣言(91年)の遺訓の原点に返るだけの話である。
以上の諸条件を前提に我々は北朝鮮の「安全保証」に前向きで対応すべきであると考える。


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