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混迷の韓国政界 波紋呼ぶ「大統領信任投票」提案

思想新聞2003年11月1日【ニューススコープ】

深刻な国民の政治分裂北東アジア情勢に悪影響

 北朝鮮に核放棄を迫る6ヵ国協議が始まったばかりだというのに、韓国政界が大きく揺れている。側近が汚職で逮捕されるなどして盧武鉉大統領の支持率が著しく低下、そこで盧大統領が「国民に再信任を問う」と表明し、12月中旬にも国民投票を実施する提案を行ったからだ。盧大統領は今年2月に就任したばかり。いくら支持率が低下したといっても国民投票で再信任を得るというのは前代未聞の手法である。与党が分裂し、国会での大統領の基盤が脆弱となり、再信任投票は追い込まれた大統領の「一発逆転」を狙ったカケとされる。だが、野党は再信任投票でなく、あくまでも弾劾をめざすとしている。韓国政界が揺れれば揺れるほど、ほくそ笑んでいるのは北朝鮮に違いない。韓国の不安定化は北東アジア情勢に影を落としている。

 盧武鉉大統領は10月13日、国会での施政方針演説の中で、国民に自らの信を問う国民投票を12月15日前後に行うと提案、同投票で不信任されれば2カ月後に辞任し、来年4月15日に投票される総選挙と同時に大統領選挙を実施するとの政治日程まで示した。大統領の任期は5年。盧大統領は今年2月に就任したばかりなので、異例の再信任投票案である。
 盧大統領が同案を提示した背景は、与党分裂によって大統領の議会基盤が少数になったことと支持率が著しく低下したことがあげられる。大統領としての指導力を回復するには再信任投票によって「一発逆転」を狙うというのが大統領の思惑と見られている。
 韓国の現在の国会議員は272人。もともとの与党は盧武鉉大統領も党員で金大中前政権時代から与党だった民主党だが、9月20日に盧大統領に近い革新系議員が集団脱党し、新たに「国民参加統合新党」を結成。盧大統領も離党し、民主党には金大中氏グループだけが残り野党宣言を行った。
 その結果、国会勢力は野党ハンナラ党(149議席)、民主党(63議席)、統合新党(43議席)、自民連(10議席)の4党体制になった(無所属など他に7議席)。大統領与党・統合新党は国会で20%しかなく、野党3党が結束すれば「国会議員の過半数が発議し、3分の2が賛成すれば大統領を弾劾できる」(韓国憲法)という状況に陥った。さっそく民主党が監査院長内定者の国会同意案に反対して否決され、盧大統領の国会運営の難しさを見せつけた。
 こうした少数与党の国会を乗り切るため、再信任投票で指導力を回復しようというのが大統領サイドの思惑である。さらに再信任投票で盧大統領の支持率低下に歯止めをかけようとしている。2月の大統領就任時には80%もあった支持率が下がり続けているからだ。
 国民世論は昨年12月の大統領選で真っ二つに割れた。高齢世代を軸にする保守層は大統領就任直後には盧大統領が国民和合を図ることを期待したが、北朝鮮の核開発に毅然とした態度をとれず、米国との関係が危ういばかりか、大統領側近や左派系人物を登用したことで一層の大統領批判に傾斜した。
 また従来の支持基盤である若年革新層も失業率の増加で不信感を募らせつつある。昨年、6%前後で推移してきた経済成長率は今年に入って2%前後に低迷している。
 しかも盧大統領はマスコミの大統領批判に大人げない告訴戦術をとり、マスコミを敵に回してしまった。そんな中で側近で「金庫番」とされる大統領府前秘書官が財閥のSKグループから不正資金を受け取って逮捕される汚職事件が発生、大統領の唯一のアピール性とされた「清潔・道徳性」も地に落ちてしまった。
 こうしたことから支持率が急落、10月に入って行われた各種世論調査では、遂に20%台を切るところも出てきた。このまま来春の総選挙を迎えれば、統合新党に活路はなく、政局運営の困難さは一層、深まることは必至と見られていた。そこで盧大統領は「一発逆転」の再信任投票案を持ち出してきたというわけだ。
 しかし、再信任投票の前例がないだけに、どのような形式で投票が行われるのか不透明な部分が多い。憲法には国民投票について「外交、国防、統一その他、国家安危に関する重要政策」との対外政治に限定しており、大統領の再信任投票は憲法規定にないとの見方が有力だからだ。
 野党ハンナラ党は憲法違反として国民投票提案の即時撤回を求め、民主党と自民連との三党で共同歩調をとることに合意した。だが、野党は一致団結しているわけでもない。次なる大統領候補についても曖昧で、野党結束も疑問視される。世論調査では大統領を支持しないものの、政治混乱も願わないという人も多く、わずかに信任派が不信任派を上回っている。そこに盧大統領は活路を見いだそうとしている。
 盧大統領が描くシナリオは、国民投票で再任された後、人事一新で指導力を印象づけ、その勢いで4月の総選挙に臨み、統合新党の躍進をはかって少数与党体制に終止符を打とうというものだ。
 もちろん、この思惑どおりに進むとは限らない。不信任され、四月に総選挙と大統領選の同時選挙になる可能性も秘めている。信任されても総選挙を乗り切れるかどうかはわからない。いずれにせよ韓国政界の不安定さは当分、続くことになる。

■北朝鮮の分裂工作が続く

 このような韓国情勢の不安定化を、北朝鮮がほくそ笑んでいるのは間違いない。
 10月中旬に平壌で開催された第12回南北閣僚会談では北朝鮮の高飛車な姿勢がきわだった。17日に発表された共同報道文では、昨年10月の北朝鮮の核開発が発覚して以来、常に盛り込まれていた核問題に触れることもできず、来年2月の次回会合の日程を決めたにとどまった。事実上の決裂といってよい成果のない閣僚会議となった。北朝鮮は「非転向長期囚」の送還など韓国の足下を見透かすような要求をくり広げた。明らかに北朝鮮は韓国を揺さぶろうとしているのだ。
 たしかに今日の韓国の分裂は最近にはない深刻なものだ。韓国の政治分裂といえば、かつては地域対立と相場が決まっていた。しかし、現在は「地域分裂」に「保革分裂」が加わり、その上に「世代間分裂」「労使分裂」、そして「政府・マスコミ分裂」など、社会のいたるところで対立が深まっている。
 こうした分裂を克服するには指導者に強いリーダーシップが求められる。にもかかわらず、大統領だけでなく与野党議員も含めて政治家には指導力が著しく欠落している。今は国際問題となっている北朝鮮の大量破壊兵器開発問題の解決にイニシアチブを発揮し、民族の悲願である南北統一へと駒を進めていかねはならない重要な時期である。にもかかわらず、韓国の政治リーダーたちは分裂劇に踊っているかのようである。
 対北朝鮮政策は日韓米三国の結束が何よりも重要である。それだけに韓国の再生を心から願わざるを得ない。

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