思想新聞 1998年9月25日号 主張
北朝鮮の「テポドン」弾道ミサイル発射に対する日韓米の三国の対応の違いから、日韓米関係に微妙な溝が広がっているといわれる。対北朝鮮外交はなによりも日韓米三国の一体的な取り組みが不可欠である。三国の分断を図り、それを自国に有利な外交手段として駆使しようとしている北朝鮮の対外戦略を見据えて、日韓米の一体化をより強めねばならない。
「北ミサイル」で日韓米「温度差」
今回の「北朝鮮ミサイル」は日本全土を射程距離においていることを証明した。このことによって、日本の安全に新たな脅威が生じたことは間違いなく、その意味で看過できない事態である。とりわけ何ら通報もなく日本上空を飛び越えて打ち込んだことは、国際常識から逸脱する蛮行であり、日本に直接的脅威を与えている。
たとえ人工衛星の打ち上げであったとしても、その技術が「テポドン」ミサイルそのものである以上、脅威は増しこそすれ、減ることはあり得ない。その意味で日本政府が北朝鮮を厳しく非難するのは当然のことである。
これに対して韓国は「北朝鮮ミサイル」がアラスカ沖まで飛ぶ能力を有しており、ミサイル技術が予想以上に進んでいることに注目している。しかし、北朝鮮はすでに韓国全体を射程距離に入れる「ノドン」を配備しており、新たな脅威の出現といった驚きはない。 韓国の金大中大統領は今回のミサイル問題が発生しても、これまで通り「太陽政策」を維持していく考えである。日韓には明らかに対応に温度差があるように見受けられる。
しかし、これをもって日本は韓国が北朝鮮の脅威を軽く見ていると考えるのは早計である。なによりも韓国は日常的に北朝鮮の脅威に直面しており、今年に入っても小型潜水艦や武装ゲリラの侵入事件が勃発している。この韓国の直面する現実を他人事のように見てきたのは、日本のほうではなかったのか。
われわれは韓国の「太陽政策」を十分に理解しておく必要があろう。金大中大統領が明らかにしているように、「太陽政策」は北朝鮮を国際社会に引き出し、ソフトランディング(軟着陸)を目指すもので、あくまでも「自主的安保体制を強化するとともに韓米安保体制をより堅固に固め、集団安保も決しておなざりにはしない」という大前提に立っている。
米国の軍事力が平和維持の前提
一方、米国は米朝協議の進展を主眼と置いた対北外交を進めている。米国が懸念するのは、北朝鮮が韓半島や北東アジアの脅威にとどまらず、中東や南アジアにミサイルを輸出するなど世界に「戦争とテロ」を輸出し、国際紛争の元凶になっていることである。
すでに米国は北朝鮮の核開発疑惑に対して、95年に軽水炉を提供する朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を発足させ、さらに米中韓朝の四者協議を軸に対話の場の拡大を図ってきた。北朝鮮は核開発を「核カード」とし、今回の場合も「ミサイルカード」として利用しようとしていることは明白だが、米国は対話の場に引き込んで封じ込める考えである。
その前提が在日米軍を柱とする軍事力であることは論を待たない。米朝協議の進展のために、今回のミサイル発射に対して日本側と温度差があると言っても、米国が北朝鮮の脅威を見逃しているわけでは決してない。
したがって日本の対北朝鮮外交で最も重要なのは、周辺事態法案を早急に制定し日米安保体制をより堅固にすることである。それが日韓米一体化への道である。


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