国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1898号 (令和8年5月1日)

欧州と日本の社民は異質

思想新聞1998年10月5日号 主張

 ドイツ総選挙で社会民主党が第一党に躍進し、同党首相候補シュレーダー・ニーダーザクセン州知事が首相に就任する見通しとなったことから、欧州の主要国の大半で社会民主勢力の政権が成立することになった。だが、これは欧州の話であって、現在の日本の社民主義にも政権担当能力があると考えるのは早計である。

 保守政策継承のシュレーダー氏

 ドイツ総選挙でコール首相の率いる保守政党が敗北し、16年ぶりに政権交替が行われることになった。しかし、第一党になった社民党も単独で過半数を得られず今後、シュレーダー首班の連立政権づくりが模索される。その有力な連立相手が緑の党で「赤緑連合」と称されている。
 緑の党は原発反対やNATO(北大西洋条約機構)からの脱退、在独米軍の撤退など左翼政策を掲げており、仮に「赤緑連合」が成立した場合、シュレーダー政権が左翼政権とならないか危惧される。
 今回、社民党が勝利したのは、同党の従来の政策を転換させ保守政策を公約に掲げたからである。シュレーダー氏は選挙戦を通じて「新中道」を打ち出し、欧州統合政策や安保政策などはコール政権の政策を継承するとしており、失業問題や年金・医療改革などで社民色を出しているだけである。
 だからこそ、国民は安心してコール政権からの世代交代を選んだのである。今回の選挙で有権者は「世代交代を求めた小さな変化」を選択したと言われているゆえんである。
 もし、社民党左派のラフォンテーヌ党首が新政権の左傾化を図り、あるいは緑の党の左翼政策に野合するようなことがあれば、国民からひんしゅくを買い、シュレーダー政権は短期政権に終わってしまうであろう。緑の党の獲得投票率は6%台にすぎず、外交・安保政策では圧倒的多数がコール政策を支持しているのである。その意味で新政権の課題は左派路線をいかに排除するかにある。
 ところで、今回のドイツ社民党の政権獲得で、欧州連合(EU)に加盟する15カ国のうち、英独仏伊など13カ国で社民勢力が政権与党になった。欧州は社民時代に入ったといえる。
 だが、欧州の社民主義は、日本の社民党で代表される社民主義とは根本的に相違していることを肝に銘じておくべきである。

欧州社民は米国との軍事同盟を選択

 欧州の社民主義は第一に共産主義とは完全に訣別している。1951年、当時の西欧の社会民主主義政党は西ドイツで開かれた社会主義インタナショナルに参加、「自由主義国における社会主義は民主社会主義である」としたフランクフルト宣言を採択し共産主義と訣別しているのである。
 しかし日本の社民勢力はイタリア共産党のトリアッチの構造改革論や旧ユーゴ共産党の自主管理社会主義といった、いわゆる修正共産主義の呪縛の中にある。
 第二に、欧州社民主義は従来の特徴とされた労組依存型の「大きな政府」からの脱皮を目指している。このことはブレア英首相の「第三の道」路線で明らかであり、「小さな政府」の中での社会保障策を求めている。これも日本の社民党とは違う。
 第三に欧州の社民政権は米国との軍事同盟・NATO(北大西洋条約機構)の堅持を主張している。この点も反米・反安保の日本の社民勢力とは異質なのである。
 こうしたことを踏まえれば、日本の社民主義に政権担当能力があるとはとうてい考えられない。間違っても欧州と日本を同一視すべきではない。

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