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脱北者ついに1000人突破強まる 北朝鮮への国際圧力

思想新聞2003年2月1日号【1面TOP】

米と盧新政権との連携が重要に

 韓半島情勢は今年に入って新たな動きを見せ始めている。北朝鮮の「瀬戸際外交」には変化が見られないものの、北朝鮮を国際対話の場に誘導しようとの動きが活発化してきた。米国はこれまでの対話拒否姿勢を転換させ、ロシアはプーチン大統領特使を派遣して核問題の解決を模索、1月21日からソウルで南北閣僚会議が再開された。これは北朝鮮にとっては「瀬戸際外交」の成果に見えるだろうが、実際は国際社会の北朝鮮包囲網が一段と狭まってきたことを意味している。北朝鮮から韓国への亡命者数が昨年、1千人を突破したことで明らかなように、北朝鮮はいよいよ追いつめられてきた。金正日総書記は「瀬戸際外交」の落としどころを模索せざるを得なくなってきた。日本は韓国の盧武鉉新政権と米国との連携を密にし、圧力を弱めずに北朝鮮を国際対話に誘導していかねばならないだろう。

 韓国統一省は1月16日、昨年中に北朝鮮から脱出して韓国に入った人の数が1141人に上ったと発表した。亡命者数がついに1千人台の大台に乗ったのだ。その内訳は男性524人、女性617人で初めて女性が男性を上回り、年齢別では全体の六割が20~30だった。出身地別では中国と国境を接する北部の咸鏡北道が6割以上を占めている(時事1月16日)。
 1990年代以降の脱北者は、下図にあるように、93年まで1桁で推移してきたものの、94年からは2桁に増え、99年には3桁になり、それ以降、倍々で増加してきた。2001年の亡命者数が583人だったから02年はその2倍に相当する。まさに亡命者数の倍々ゲームが続いているのだ。
 この意味するところを十分に掌握しておかねばならない。
 第一に亡命者増は、北朝鮮社会の瓦解状況に一段と拍車がかかっていることを意味している。つまり、命懸けで北朝鮮を脱出するほど生活苦が進んでいること、そして脱出すれば今よりましだという韓国や中国の生活情報が徐々に浸透してきていること、さらに脱出を阻止する北当局の治安力が低下してきていること――などが挙げられる。
 第二に、脱出中継地となっている中国がどう動くかが焦点になってくる。89年の東ドイツ崩壊の場合、脱出中継地だったハンガリーが東独市民の西独脱出を容認したため、雪崩を打った亡命劇が始まり、それが引き金となってベルリンの壁が崩壊した。中国がハンガリーになるか否かが注目されよう。
 むろん、現在のところ中国が脱北者を受け入れる可能性は低い。中国と北朝鮮は、1986年に「国境地域の国家安全および社会秩序維持業務のための相互協力議定書」を締結、昨年12月上旬から今年3月まで中朝共同で脱北者掃討作戦を展開し、すでに中国東北三省(吉林、黒龍江、遼寧)で数千人を逮捕、3千2百人以上を北朝鮮に強制送還したといわれる(韓国・世界日報1月10日)。
 しかし、脱北者支援活動家らによると、58人を日本や韓国へ脱出させようとして、1月中旬までに中国当局に拘束された。その中に元在日朝鮮人が含まれており、脱北者問題は中朝関係にとどまらなくなってきた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、中国側に対し拘束された人を北朝鮮に送還しないよう申し入れており、いよいよ国際化してきたといえる。
 そうした中で、北朝鮮を取り巻く国際情勢は変化を見せてきた。
 昨年12月以降、北朝鮮は「瀬戸際外交」を発動。「太陽政策」を継承する盧武鉉氏が大統領選に当選するやいなや、寧辺の黒鉛実験炉でIAEA(国際原子力機関)が設置していた封印を一方的に撤去、さらに年明け早々にIAEAの査察官を追放、国際社会を挑発するかように核開発の姿勢を鮮明にした。
 これに対して米国は1月7日の日米韓政策調整会合で北朝鮮との対話姿勢を表明、さらにブッシュ米大統領は14日、北朝鮮が核開発を放棄すればエネルギー・食糧支援などを含む「思い切ったイニシアチブ」を再検討する考えを明らかにした。その後、日韓を訪問したケリー国務次官補は北朝鮮の核開発計画放棄を条件に同国への不可侵確約や経済支援などを検討する包括的提案を示した。
 一方、ロシアはロシュコフ外務次官を大統領特使として訪朝させ、20日に金正日総書記と会談した。ロシアは、【1】韓半島の非核化【2】核不拡散体制の堅持【3】94年の米朝枠組み合意の順守【4】北朝鮮の安全保障に関する協議開催【5】北朝鮮への人道・経済援助の再開――の五点を提示したと見られる。同次官は「会談は6時間近くにわたり、成功裏に終了した」と述べており、ロシアも北朝鮮を国際対話の場に誘導するように積極的に動き始めた。
 こうして米朝対話を軸にした国際対話の道が徐々に敷かれてきたといえよう。これを踏まえてIAEAは近く北朝鮮の核問題を国連安保理に付託する。安保理に付託されたからといって即、制裁には結びつかないが、北朝鮮がますます国際社会から圧力を受けるのは必至である。
 北朝鮮にとってはこうした国際環境の変化は「瀬戸際外交」の成果と位置付けていよう。韓国が提唱した南北閣僚級会談の受け入れもそうした「瀬戸際外交」の一環といえる。
 ソウルで1月21日から開催された第9回南北閣僚級会談では、韓国側が核放棄を求めたのに対して北朝鮮側は核開発が電力生産をはじめとする平和的目的に限られると表明、「民族共助」を強調して反米共闘を呼び掛けた。相変わらずの米国批判だが、核問題をエネルギー問題に集約させることによって米国との対話の道筋を付けようとする考えが暗示されているともいえる。
 こうして見ると、膠着状態にあった韓半島情勢が動き出したと見て間違いない。むろん、米国はイラク問題を抱えており、金正日総書記がイラク情勢の行方を注視していることは論を待たない。そして2月25日には、韓国で盧武鉉大統領が就任する。北朝鮮は盧新政権の動向も見定める必要があると考えていよう。
 日本にとり最も重要なことは、ブッシュ米政権と盧武鉉韓国政権と連携を密にすることである。つけ入る隙を与えずに、対北朝鮮政策に取り組んでいかねばならない。

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