国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1898号 (令和8年5月1日)

中教審答申 ジェンダーフリー侵入の恐れ

思想新聞2003年4月1日号【ニューススコープ】

宗教心教育も盛り込まず
教育基本法「改悪」の危惧残す

 中央教育審議会は3月20日、教育基本法の抜本改正を求める最終答申を遠山敦子文科相に提出した。同答申は教育の基本理念として「国を愛する心」や「社会の形成に主体的に参加する『公共』の精神」などを新たに盛り込むとしている一方、宗教心教育については触れず、さらに「男女共同参画社会への寄与」を上げ過激な性教育(いわゆる性交教育)の背景となっているジェンダーフリー思想を学校に持ち込ませる危険な内容も含まれている。このように中教審答申は「改正」と評価できる面と「改悪」としかいえない面の両面性がある。今後、与党が教育基本法改正案をまとめる際、善し悪しを峻別しているかどうか、国民は厳しく監視しなければならない。

 中教審の最終答申について、高橋史郎・明星大学教授は次のように述べている。
「21世紀の教育目標として、日本の伝統文化を基盤とした『日本人の育成』を挙げた点は評価できる。しかし、最終段階で追加された男女共同参画に関する文言がジェンダーフリー(性差否定)教育につながらないよう条文で配慮する必要がある。最も危惧されるのは、家庭教育の役割を新たに規定するとしながら、働く母親の都合を優先する家庭教育支援策が家庭教育を破壊しかねない点だ。保育サービス充実を目指す家庭教育支援策を見直すべきだ」(産経新聞3月21日)。
 このように伝統・文化の尊重などは評価できるものの、ジェンダーフリー思想の浸透や家庭観を問題視する声は少なくない。林道義・東京女子大学教授も「家庭教育の重要性に言及したことも評価できるが、一方で家庭について『最小限の範囲で(条文に)規定する』としていることには矛盾がある。また『父親のかかわりが十分でない』とだけ指摘しているのは疑問だ。母親が適切にかかわっていないことも大きな問題だと思う」(同)と指摘している。
 中教審答申の正否を判断するには、いったい教育基本法のどこが問題だったのか、もう一度これを整理しておく必要がある。その問題点は以下の五点である。
【1】教育基本法は「個人の尊厳」を強調するあまりに子どもたちに自己中心的、エゴイズムの「私」ばかりを重要視させて、「公」に対する義務を軽視させ「為に生きる精神」を奪ってきた。
【2】教育基本法は個人の価値や利益を越えた「公益」や「全体の価値」すなわち共同体としての国民的一体感(ナショナル・アイデンティティ)の養成を怠り、歴史や文化、伝統を軽視し、郷土愛や愛国心を子どもたちから奪ってきた。
【3】教育基本法は家庭の価値をかえりみず、家庭の基本的理念すら提示しないことによって人としてのあるべき徳目から目をそらさせ、教育荒廃を解決する適切な指針となり得なかった。
【4】教育基本法は宗教的情操教育(宗教心教育)を否定することによって生命の根源に対する畏敬の念を失わせ、道徳教育を形骸化させて、心豊かな子供たちを育てられなかった。
【5】教育基本法は「教育は不当な支配に服することなく」(第十条)との条項を盾に国の教育権がないがしろにされ、日教組をはじめとする左翼教師の唯物論・革命教育を許してきた。
 したがって、この五点を克服してこそ教育基本法を改正したといえる。
 これに対して中教審の最終報告は「公共」に関する国民共通の規範の再構築や伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心といった日本人のアイデンティティの確立を目指す条項を盛り込むことを求めており、さらに家庭の果たすべき役割や責任を新たに教育基本法に規定することが適当としており、こうした点は評価されよう。
 だが、最終報告は宗教心教育については棚上げにし、国の教育権についても何ら触れていない。また素案の段階では「愛国心」と明記されていたものを偏狭なナショナリズムの誤解を与えるとして「国を愛する心」に変更したように及び腰が目立つ。
 最も問題なのは、新たに規定する理念として「男女共同参画社会への寄与」との項目を設けたことだ。最終答申は、「社会における男女共同参画は、まだ十分には実現しておらず、男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を実現するためには、このような現行法の理念は今日においてより重要である」としている。
 今、学校では「男女共同参画社会の実現」を口実に、変形共産主義のジェンダーフリーが左翼教師らによって持ち込まれ、男女混合名簿や高校生に男女同室で着替えさせたりする事態が発生している。さらに「性解放論」を掲げ、教室にコンドームを持ち込み「性交を早く教えることは良いことだ。性の解放は正しいことだ」といった「性交教育」を推進している。
 昨年秋には東京都国立市の市立小学校一年生の授業や東京都北区の区立小学校五年年の理科の授業で、性交を連想させる過激な性教育が行なわれていたことも判明している(「知らぬは親ばかり/女性器まで触らせる小学校の『過激すぎる性教育』週刊新潮1月23日号」。
 日教組は今年2月に開いた第140回中央委員会で「男女平等政策と運動」方針を提案した。それによると「卒業式・入学式をジェンダーの視点から見直す」「男女の自立・平等・共生をめざすカリキュラムを作成する」「総合学習にジェンダーフリーの視点から学習課題を位置づけ、授業実践をすすめる」「男女混合名簿の拡大、保健体育の共学化をすすめるとともに『隠れたカリキュラム』を是正する」「ジェンダーフリー教育の理論学習をすすめ、攻撃には毅然として対応する」など、ジェンダーフリーを一段と教室に持ち込むことを目論んでいる。
 もし教育基本法の見直しで前述の「男女共同参画社会への寄与」が盛り込まれれば、日教組や全教はこれを根拠に猛烈にジェンダーフリー教育を推進するのは必至だ。そうなればせっかく伝統・文化を強調し道徳教育を推進しても、ジェンダーフリー論ですべてひっくり返され、教室に共産主義の徘徊を許すことになるだろう。
 また高橋、林両氏が指摘しているように、家庭教育が重視されても、その家庭観が「多様な家庭」とか「主婦狩り」を前提とする家庭ならば、逆に家庭重視の名の下に家庭崩壊を招きかねないのだ。
 このように中教審の最終答申に危うい内容が盛り込まれているのは、中教審メンバーに日教組系人物が加わっているからにほかならない。政府・与党は中教審答申を鵜呑みにしてはならない。真の教育改革を進めるために政治家は自ら責任をもって教育基本法改正案を作成すべきである。

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