国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

日朝政府間交渉 拉致解決へ原則を貫け

【思想新聞2004年5月15日号】 主張

 日朝政府間交渉が5月4、5日の両日、北京で開かれた。交渉内容の詳細は明らかでないが、小泉首相は「かなり具体的な話をした」と述べており、拉致被害者家族の帰国問題で新たな進展を見たようだ。

無条件帰国と真相究明必要

 拉致問題の解決は、かねがね日本側が主張しているように、北朝鮮が帰国した5人の拉致被害者の家族8人を無条件で日本に帰し、横田めぐみさんら「死亡・入国せず」とした10人をはじめ拉致疑惑がもたれている日本人の真相究明を明確にすることによって前進する。それ以外の選択肢は存在しない。このことを改めて確認しておきたい。
 なぜこの時期に急きょ、北朝鮮が日朝交渉を再開されたのだろうか。そこから北の意図を察知しておく必要があるだろう。
 第一に、2月の日朝交渉もそうだったように、六カ国協議の前に日朝交渉を先行させ、拉致問題を六カ国協議の議題から外そうとしていることだ。
 北朝鮮は「核カード」を有効に使って米国の妥協を引きだそうと企図しており、六カ国協議で日本側から拉致問題を持ち出されるのを嫌っている。今年3月の第二回協議の前に突然、日朝交渉を申し入れてきたのもそこに狙いがあり、拉致問題は日朝二国間で協議中であるとの“証拠”づくりを狙っている。
 今回の日朝交渉も、12日から北京で始まる六カ国協議の作業部会の初会合の直前であり、同じ意図がうかがえる。仮に北朝鮮が拉致家族の帰国への「具体案」を提示したなら、拉致解決をテコに日本から経済支援をどの程度引き出せるのか、瀬踏みの一環と見てよい。
 第二に、米国が4月29日に発表した2003年版の国際テロリズム報告で北朝鮮を引き続き「テロ支援国家」と指定、その理由の中で「日本人拉致」を初めて明記したことである。
 北朝鮮は核解決の見返りに米国に経済支援を求めているが、「テロ支援国家」と指定されている限り米国は法的に支援できない。今後、北朝鮮が米国からの援助を取り付けるに際して拉致問題の解決が前提となる。その意味で拉致問題は単なる日朝の二国間協議のテーマだけに限定されなくなった。これは拉致解決の大きな援軍となる。拉致解決が核問題や米朝交渉とリンケージしたからだ。少なくとも北朝鮮は日本との間で、より真剣に拉致問題の解決に当たらざるを得なくなったと言えよう。
 第三に、わが国が日本独自の判断で北朝鮮への「経済制裁」を発動できる改正外為法を二月に成立させたのに続いて、北朝鮮船舶の入港を禁止する特定船舶入港禁止法案を今国会で成立させようとしていることだ。
 同法案が成立すれば日本はいつでも「万景峰号」の入港を禁止できる「経済制裁カード」を持つことになる。この「圧力」を回避しようと日朝交渉に乗りだしてきたのだ。
 第四に、先の韓国総選挙でウリ党が過半数を獲得し親朝の民主労働党も初議席を得て、韓国が親朝・親金正日路線へと傾く可能性が高まったことだ。
 北朝鮮はいま、絶好の外交攻勢期と位置付けている。それが金正日総書記の訪中であり、中朝関係の強化を背景に韓国を取り込み、日本を引き寄せ日韓米を分断しようとしている。とりわけ米国を孤立化させようと、拉致家族の帰国を最大限に利用しようとしているのだ。
 要するに、北朝鮮が目指しているのは「金正日体制」を維持したままで、米国や日本、韓国から経済支援を取り付け、それをテコにさらに「金正日体制」を強化していくことである。むろん、「金正日体制」維持は北朝鮮自身の問題であるが、しかしながら国際社会は北朝鮮がこの思惑を実現するために核やミサイル開発を強行し大量破壊兵器を背景にさらなる「軍事強盛大国」を目指すことを容認できるはずがない。北東アジアのみならず世界の脅威になっているからである。

包括的解決が唯一の選択肢

 この点について日朝平壌宣言は「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を順守することを確認」し「核問題およびミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国家間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認」している。
 にもかかわらず、北朝鮮は一方的にNPT(核拡散防止条約)体制から離脱し、公然と核開発に踏み切った。これでは「相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現」(同宣言)に至ることはとうていできない。だからこそ拉致と核、ミサイル問題などの包括的解決が不可欠なのである。このことを北朝鮮は肝に銘じておくべきだ。
 わが国は特定船舶入港禁止法案を今国会で成立させ「圧力」となるカードをさらに強化すべきだ。それが北朝鮮との「対話」で有力となる。 

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