この記事は2011年1月17日に投稿されました。
死者6434人、負傷者4万3792人を出した1995年1月の阪神大震災から1月17日で16年が経った。犠牲者の霊に謹んで哀悼の意を表する。
日本は地震列島と呼ばれている。北米、ユーラシア、太平洋、フィリピン沖の4つのプレートにまたがり、そのプレートが定期的に動き、跳ね上がって巨大地震(海溝型地震)を起こすからである。それだけでなく2000カ所以上とされる活断層によって直下型地震にも見舞われる。日本列島にいつ、どこで地震が発生しても不思議でない。「災害は忘れたことにやってくる」(寺田寅彦)。事実、阪神大震災後に新潟県中越地震(04年)や福岡県西方地震(05年)、岩手・宮城内陸地震(08年)など10回以上も大地震が発生している。政府の中央防災会議の専門会議によると、今後の大地震による被害想定は①近畿直下(死者4万2千人、経済被害74兆円)②中部直下(1万1千人、33兆円)③首都直下(1万1千人、112兆円)④東海海溝型(9千人、37兆円)⑤東南海・南海海溝型(1万8千人、57兆円)などとなっている。震災対策に万全を期したいものである。
「減災」にハード・ソフト両面で不十分
阪神大震災の教訓は何だったのか。大地震だけでなく一般的に危機に対応するには①危機の予測・予知を早期に行う「早期警報システム」②危機の発生を可能な限り未然に防ぐ「危機防止・回避システム」③危機が発生した場合、被害を最小限にとどめる「危機対処・拡大防止システム」④危機を再び発生させない「危機再発防止システム」の4つを機能させねばならない。①②については、政府は95年に地震防災対策特別措置法を制定し、体に感じない地震も観測できる高感度地震観測網を整備し「全国地震動予測地図」を作成、津波の予測精度の向上や活断層の詳細地図の作成などに取り組んでいる。また強い揺れの到達を予測する緊急地震速報を発表し、岩手・宮城内陸地震では震源地に近い地域では間に合わなかったが、仙台市営地下鉄が5秒前に緊急停止信号を受信し、自動停止装置を作動させた。とはいえ地震予知はまだ道半ばである。
③については、当時の村山・社会党首班下で対応が遅く、兵庫県知事が自衛隊に災害出動要請をしたのが発生4時間後、政府が非常災害対策本部を始動させたのが6時間後で、自衛隊が本格的に救援活動を始めたのは実に発生40時間後だった。これを教訓に政府に内閣危機管理監を置き、地震発生直後に迅速に危機管理本部を設置、95年に自衛隊法を改正し自衛隊の自主的出動を可能とし、新潟県中越地震では発生7分後に「第3種非常勤務態勢」(1時間以内に全隊員集合)を発令、発生36分後に偵察ヘリを出動させた。
最大の課題は被害を最小限にとどめる③すなわち「減災」にどう取り組み、④に生かすかである。この点はハード、ソフト両面に課題を残している。阪神大震災では犠牲者の99%が家屋内だった。このうち77%が家屋倒壊による圧死、9%が焼死、8%が家具による死である。将来の被害想定も同様で、首都直下では倒壊建物が最大85万棟に達し、そこで多くの犠牲者が出ると見られている。住宅の耐震化がハード面での減災のカギとなる。政府は住宅の耐震化率を2015年に90%にする目標を掲げているが、現在75%にとどまり、全国の約1千万戸に倒壊の恐れがある。とりわけ災害拠点病院や救急センターの38%が耐震基準を満たしておらず、また避難所になる公立小中学校施設の約7800棟が震度6強で倒壊すると予想されている。にもかかわらず民主党政権は2010年度予算では学校の耐震化予算の6割をカットするなど防災予算を大幅に削り、11年度予算も十分とは言いがたい。政府や自治体は耐震化助成金を大幅に増やすべきだろう。
ソフト面の減災の決め手は、地域社会の共助システムの構築である。阪神大震災では家屋に埋もれた人は16万4千人にのぼり、このうち79%(12万9千人)が自力脱出、3万5千人が埋もれたままとなった。そのうち2万7千人(77%)が家族や近所の人に助けだされた。残りの約8千人が消防隊や自衛隊によって掘り起こされたが、6千人以上が亡くなった。このことからも地域の防災組織の重要性が理解できよう。それを教訓に自主防災組織作りが叫ばれ現在、全国の73%の世帯をカバーしている。しかし、高齢化によって組織運営ができないなど、問題が山積している。自主防災組織作りとその活性化が急務といえる。国や自治体の新たな支援策が必要になる。
「民間防衛」組織を地域に整備せよ
自主防災組織との関わりで、忘れてはならないのは「民間防衛組織」についてである。韓国・延坪島のような無差別砲撃があった場合、日本は大丈夫なのか、多くの国民が不安感を抱いたはずである。地域社会のどこにも防空壕がなく、どこに逃げればよいのか、戸惑ったことであろう。このことは自主防災組織と深く関わっている。
04年に国民保護法が成立し、05年には武力攻撃事態や大規模テロの際の住民避難措置などに際して国や地方自治体が取るべき役割を定めた「国民保護に関する基本指針」が定められた。これを基づき都道府県・市町村は06年に「国民保護計画」を策定した。政府の国民保護の指針によれば、ミサイル発射や大規模テロが発生した際、国民に直ちに直近の屋内施設に避難するよう求め、情報伝達には行政防災無線や地域衛星通信ネットワークなど複数の通信網を活用するとしている。しかし、国民に義務を課さず、任意に避難などの協力を求めるだけで、これでは国民を烏合の衆にしかねない。また洪水などで経験済みだが、避難勧告の的確な伝達と速やかな避難には通信網の活用だけでは不十分で、地域に密着した自主防災組織が活躍せねばならない。ミサイル攻撃への対応策も希薄で、ましてや核攻撃をまったく想定していない。
この教訓を国民保護体制に生かせば当然、自主防災組織を即座に民間防衛組織に活用できる新たな仕組みを作らねばならないはずである。政府は平和ボケを引きずって民間防衛組織づくりを怠っている。多くの国は民間防衛組織を国民に義務付け、有事や自然災害に備えている。たとえば、スイスでは民間防衛組織を「敵の攻撃、または自然災害によって引き起こされる被害の局限化、緊急事態の処理、重要施設の応急修理、復旧に関する非軍人の活動であり、そのための機関組織」と定義づけ、地域にくまなく民間防衛組織を作っている。
阪神大地震と韓国・延坪砲撃事件を教訓に自主防災組織を民間防衛組織としても活用できる道を開くよう求めたい。
2011年1月17日


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