国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

世界で活躍する邦人を守れ─自衛隊法を改正せよ

この記事は2013年1月24日に投稿されました。

アルジェリア南東部の天然ガスプラント施設で今月16日に起こった人質事件は、日本人10人が死亡するという最悪の事態で幕を閉じた。
 安倍首相は21日深夜、「世界の最前線で活躍する日本人が、何の罪もない人々が犠牲となり、痛恨の極みです」と語った。中東・北アフリカは今なお不安定な地域だが、政府や企業の国益の最前線でもある。こうした中で、日本のエネルギー開発を勇敢に支えてきたにも関わらず、許しがたいテロ攻撃の犠牲となった方々のご冥福を心からお祈り申し上げる次第である。
 世界では、テロとの戦いはまだ終わっていない。
一昨年にはウサマ・ビンラディンが殺害されたが、アルカイダなど過激派のテロ活動は逆に中東全域に拡大している。アルジェリアといえば、「アラブの春」の革命による混乱が続く北アフリカにおいて比較的安定した国家とみられていた。しかし実際は、アルカイダが暗躍していたのである。
 隣国のリビアではカダフィ政権が崩壊したが、その結果、行き場を失った多くの傭兵らが大量の武器とともにマリに戻ってきた。彼らはマリ国内でテロ活動を再開した。
 マリは1960年にフランスから独立したが、ここがイスラム過激派の聖域となれば、いずれは関係が非常に深いフランス本土にもテロ集団が流入してくる。フランスはこれを国家安全保障上の大問題と捉え、ついに今年の1月11日、軍事介入に踏み切った。国連安保理は、この軍事介入に対して3日後に支持を表明している。
 日本ではあまり知られていなかったことだが、フランスでは今なお「テロとの戦い」が続いていたのだ。

国民を守れない自衛隊法

ここにきて、邦人救助をめぐる自衛隊法改正の議論が浮上している。
 現行の自衛隊法のもとでは、日本人が海外での紛争に巻き込まれた場合、安全が確認できない場所に自衛隊を送り込むことはできない。さらに安全が確認できた場合でも、法人の輸送手段は船舶や飛行機に限られる。船舶や飛行機に乗せる場所までの陸上輸送や、邦人警護のための武器使用など、救出に関する規定はまったくない。
 自民党の石破幹事長は講演で、「命からがら最寄りの空港や港湾に逃げるまでの間はだれが守ってくれるのか」と述べた。また、自衛隊に武器使用の権限がないのだから、たとえば今回の事件で政府専用機が首都アルジェに到着した際にテロ集団による攻撃があれば、政府専用機はアルジェリア軍が到着するまで逃げ回るしかなかったのだ。
 簡単に言えば、「国家と国民を守る」はずの自衛隊が、在外邦人を危機から救出することはできないということである。
 当然海外では、多くの国が自国民の保護のために軍隊などを派遣することができる。一昨年のリビア内戦の際には、欧州や中国、韓国が軍用機や軍艦まで動員して救出に向かったが、日本は自衛隊を使えず、邦人を救出したのはスペインの軍用機といわれている。
 自民党は、野党時代の2010年に自衛隊法の改正案を議員立法で提出した。改正案には法人の救出・輸送について、①安全要件を確保しない②外国での陸送を可能にし、輸送手段も限定しない③避難措置の実施を担う自衛官には任務遂行に必要な武器使用権限を付与する―ことを盛り込んだ。
 この法案は昨年末の衆院解散で廃案になったが、自民党はこれをもとに与党内の調整に入る方針だが、公明党が慎重な態度を示している。

現実を直視した議論が必要だ

テロが地球上から消滅しない限り、アルジェリアの悲劇はいずれどこかで繰り返される。テロの危機が消え去ったとしても、有事における邦人保護の問題も残っている。
 政府は国民を守るための自衛隊法改正に積極的に取り組むべきだ。そして同時に、自衛隊への国民の理解を啓もうする必要もある。
 これまで日本では、自衛隊に権限を与えることは「戦前の軍国主義に戻す気なのか」という極端な論理で封じられる傾向にあった。いわゆる思考停止状態である。
 現行法では自衛隊は国民を守れない。これが現実であり、法改正は必要である。必要な法改正が軍国主義を呼び起こす要因にはまったくなりえない。
 国民の生命と財産を守るための重要な問題である。感情論を排し、現実に対応するための真摯な議論を期待したい。

2013年1月24日

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