国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

平成15年版「防衛白書」「新たな脅威」への防衛態勢を

思想新聞2003年8月15日号【主張】

 平成15年版「防衛白書」が閣議で了承され、さきほど公表された。今年の白書の特徴は、従来は旧ソ連を「潜在的な脅威」と位置づけて着上陸侵攻を阻止する部隊編成や装備を調達してきたが、冷戦後はそうした脅威が薄れ、それに変わってテロやゲリラ、ミサイル攻撃などの「新たな脅威」が生じてきたことを強調していることだ。

現行の態勢は対応できない

 防衛白書はポスト冷戦時代の国際情勢の変化を総括し、今日、大国同士が対峙して緊張が高まることよりも、国際テロ事件や北朝鮮の核開発などで象徴されるように国際テロ集団や「ならず者国家」が世界の平和を脅かす可能性の方が高いと指摘する。とりわけ、わが国にとって直接的な脅威をもたらしているのは北朝鮮で、核開発を公然と推進し日本全土を射程に入れるノドンミサイルを130基以上も配備している。防衛白書は「ノドンミサイルはスカッドミサイル同様に発射台付きの車両に搭載され移動し運用されると考えられる。ノドンの発射については、その兆候を事前に把握することは困難である」と指摘している。
 そのうえで防衛白書は「新たな脅威」に対して「自衛隊の現体制での対処能力は不十分で、今後、これらの能力の獲得が必要」と強調。たとえばノドンミサイルに対しては、ミサイル防衛網(MD)システム導入が不可欠としている。国際情勢の変化に応じて防衛態勢を変化させることは防衛当局の責務であり、こうした白書の指摘を国民も真摯に受け止めるべきだ。
 この白書の指摘に応えるにはまず現在のわが国の防衛政策の柱となっている「防衛大綱」を新たに作り直さねばならないだろう。現行の大綱は、わが国への軍事的脅威に直接対抗するよりも自らが力の空白となって周辺地域の不安定要因とならないよう独立国として必要最小限の基礎的な防衛力を保有する「基盤的防衛力構想」が基本となっているからだ。これは防衛白書が明らかにした防衛の在り方とは根本的に認識が違う。「新たな脅威」に備える防衛態勢を構築すべく「防衛大綱」を抜本的に転換しなければならない。
 防衛白書は今後の対応策の柱にミサイル防衛を据えているが、これは当然の帰結だろう。すでにわが国はそれを見据えて今春、初の偵察衛星を打ち上げている。近く二個目の衛星を上げ本格的な情報収集態勢を作る。そこで問題になるのは将来、偵察衛星を駆使してミサイル発射の兆候を把握した場合、いかなる対応策を取るかである。十分な態勢を作るには「専守防衛」策を見直し、ミサイル発射が迫っている場合の敵国基地の攻撃を「専守防衛」の範疇に入れておかねばならない。
 同時にMDが「集団的自衛権行使」によって初めて確実なものになることも想起しておかねばならない。ミサイルがわが国を照準にしているのか、それとも日本列島を飛び越えて米国を照準にしているのか、それを判別して迎撃することは不可能で、どのケースでも迎撃する必要があり、そのために最初から「集団的自衛権行使」をうたっておかねばならないのだ。「専守防衛」の転換および「集団的自衛権行使」を明確にしなければ、せっかくのMDも機能しないのである。
 さらに問題なのは情報に対する法整備が不十分な点である。情報収集してもそれを分析・保全する能力と態勢がなければ情報は「インテリジェンス」にならず生かされない。しかし、これまでわが国は情報分析能力の構築を怠ってきたばかりか、保全についてもスパイ防止法を整備せず情報戦を軽視してきた。
 警視庁公安部は現在、元自衛官が中国やロシアの在日大使館員と接触し防衛庁資料を流出させたとして捜査を続けている。これが防衛庁がらみのスパイ事件に発展しないのか危惧されている。防衛白書が指摘したテロやゲリラなどの「新たな脅威」はもともと「間接侵略」と呼ばれてきたもので、これに対応するためにもスパイ防止法が不可欠なのである。
 こうした情報戦について防衛白書が沈黙しているのは不可解である。

国際貢献には武器使用緩和

 一方、防衛白書は自衛隊の国際平和協力について「若葉マークから卒業する時期に来ている」とし、恒久法を視野に入れ国際貢献への積極的運用を示唆している。これも国際的また時代的要請であることは論を待たない。これには武器使用基準を「国際基準」にしなければ安心して自衛官を送り出すことはできないことを忘れるべきでない。ここでも集団的自衛権行使が不可欠なのである。
 その意味で「新たな脅威」に備える「新防衛態勢」づくりには憲法解釈の変更と法整備が伴うことを強調しておきたい。

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