国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1898号 (令和8年5月1日)

テロ事件と韓半島問題 立ちすくむ太陽政策

【思想新聞2001年12月1日】【トップ】

南北関係は冬の時代に突入か「第6回 南北閣僚級会談」が決裂

 昨年6月の南北首脳会談を契機に、多少の紆余曲折はあっても大きく進展した南北関係は、今年になって二つの大きな国際的な波を受けて急ブレーキがかかった。最初の波は米国でのブッシュ共和党政権の誕生であり、米国で起こった同時多発テロと対テロ戦争の勃発(ぼっぱつ)がそれに追い撃ちをかけた。
一方、任期末が近づく金大中大統領は支持率の低下が著しい中、与党・新千年民主党(民主党)の総裁も辞任し、巨大野党・ハンナラ党の牽制を意識せざるを得ない状態に追い込まれている。98年2月の就任以来、全精力を注いできた対北包容政策(太陽政策)は大きな曲がり角を迎えている。

「私が大統領である間に、(対北政策の)全てをやろうとは思わない。次の政権やその次の政権が行って統一に向かう。今後、対北太陽政策を一貫して推進するものの、無理はしない」
 金大統領は11月23日、これまで野党が主張してきた太陽政策の「速度調節論」を受け入れるような発言を行った。金大統領がこのような立場を取らざるを得なくなったのは、国際情勢と南北双方の国内事情から停滞状態に陥った南北関係を画期的に改善するのは当面難しいと判断したためと見られている。
 まず、南北関係に決定的な影響を与える米朝関係は、クリントン政権末期には国交樹立まで視野に入れ急進展したものの、ブッシュ政権の誕生で完全に振り出しに戻った感がある。ブッシュ大統領は3月に米ワシントンで行った金大中大統領との初首脳会談で、北朝鮮の指導者(金正日総書記)に対する「疑念」を公言し、国務省はその直後に対北政策の見直しを公式発表した。
 これに対し北朝鮮は、米韓首脳会談直前に合意した第五回南北閣僚級会談を開催当日(3月13日)朝になって突然延期し、翌14日からしばらく休眠していた「米帝」という言葉を用いブッシュ政権を非難し始めた。
 米国は6月6日、ブッシュ大統領が声明を発表し、対北政策見直しの終了と米朝対話の無条件再開方針を表明したが、北朝鮮は、米国が北朝鮮の核・ミサイル・通常兵器に関する議題(到底受け入れられない条件)を一方的に提示したと反発。クリントン政権時代の米朝合意から対話を始めるべきだとして対話再開を拒み続けている。

<曲がり角の太陽政策>

 南北関係は、米朝関係冷却化の波をまともに被った。3月13日以後、先に合意済みだった南北離散家族各3百人の書信交換(同15日)や、鄭周永・前現代名誉会長死去に際しての北朝鮮弔問団訪韓(同24日)、「南北共同宣言」一周年に際して南北政府のメッセージ交換(6月15日)などはあったものの、南北政府レベルの対話や交流は全面的に中断。このため、韓国政府が今年前半の実現を目指してきた金総書記のソウル訪問は自動的に消滅した。
 このような南北関係の停滞は9月2日、北朝鮮で祖国平和統一委員会(祖平統)が林東源統一相にあてた「放送通知文」を通し、南北対話再開を提案することで転機を迎える。ちょうど韓国では、光復節(8月15日)に平壌で開催された2001年民族統一大祝典での一部韓国代表の「突出行動」をめぐり野党の林統一相解任圧力が強まる最中だった。
 待ちに待った韓国政府は即刻この提案を受け入れ、第5回閣僚級会談の15日開催がすんなり決定。直後に米同時多発テロが起こるが、第5回閣僚級会談は予定通り開催され、10月16日からの第4回南北離散家族相互訪問を筆頭に、様々な南北当局対話と交流事業の日程がぎっしり詰まった「共同報道文」が発表され、久しぶりに南北関係進展への期待が膨んだ。

<テロ事件と南北関係>

 しかしこの楽観ムードは対テロ戦争の勃発によって吹き飛ばされた。9月11日の米同時多発テロに際し、北朝鮮は当初、犠牲者に「哀悼」を伝え、外務省スポークスマンが「非常に遺憾であり悲劇的な事件」であり「(北朝鮮は)国連加盟国として、あらゆる形態のテロ、そしてテロに対するいかなる支援にも反対しており、このような立場は変わらない」(9月12日)と表明し、米国への配慮をにじませた。
 しかし10月8日の対テロ戦争開始後は、「無辜の住民を殺害したり、地域の情勢と安定を破壊する武力行使や戦争の方法は、如何なる場合にも正当化され得ない」(外務省報道官、10月9日)、さらに「主権平等を主張する国々に勝手にテロのレッテルをはり、一方的な武力干渉と制裁などで自主権を蹂躙している」(同19日、ユネスコ総会で)とテロ問題でも批判のトーンを強めている。
 北朝鮮は10月12日、祖国平和統一委員会(祖平統)報道官談話を通して、4日後に迫った第4回離散家族相互訪問など第4回閣僚級会談で合意した南北交流事業を一方的に「当分の間、延期」した。「南朝鮮では(テロ事件を口実に)全軍と警察に非常警戒態勢が敷かれ、ものものしい雰囲気が造成されており……このような中で自由な家族・親族の再会.がうまくいかないことは火を見るより明らかだ」というのが理由だった。
 北朝鮮はしかし、南北対話の継続意思を明確にしつつ、第5回閣僚級会談で合意した金剛山観光活性化のための当局会談(同19日~)、経済協力推進委員会第2回会議(同23日~)、第6回閣僚級会談(10月28日~)を、「安全性が保証された金剛山地域」で開催しようと提案した。
 韓国では反北批判世論が強まるが、政府は対話は継続すべきとの判断から、北朝鮮と会談場所をめぐって十数回に及ぶ通知文のやり取りを行うが、金剛山開催を固執する北朝鮮との調整がつかぬまま10月末を迎え、すべての南北対話日程が「自動延長」されてしまった。
 慌てた韓国政府は10月30日、「南北の緊張高潮は望ましくなく、当局間対話のモーメンタムは継続すべきだ」という理由で急きょ「金剛山不可」方針を転換し、第6回閣僚級会談の金剛山開催を受け入れる。このようにして、最後の望みをかけた第6回閣僚級会談が11月9日から金剛山で開催され、南北代表団が当初の日程を2日延長して14日未明まで折衝を続けたが、北朝鮮が韓国の「非常警戒措置」を理由に南北対話の金剛山開催原則を曲げなかったため会談は決裂した。
 北朝鮮は会談後、これまでになく北側代表団の声明(14日)、「第6回北南上級(閣僚級)会談に関する詳報」(15日)、祖平統書記局の「報道第813号」(24日)を発表し、会談決裂の責任は「全面的に南側当局の無誠意と、特に北南上級会談の南側首席代表(洪淳瑛統一相)の分別のない反北対決姿勢にある」などと、洪統一相非難を続けている。
 洪統一相は11月22日、第6回閣僚級会談の決裂原因について「われわれの経済事情がよくない上に、米国が強硬姿勢に出ており、目標達成が困難だと判断して強硬姿勢を取っているように見える」と語った。
 事実、南北対話がこれ以上進展すれば、北朝鮮は、【1】離散家族問題の制度的解決(面会所設置、生死確認・所信交換の拡大、定期的な訪問団交換など)【2】軍事境界線を横切る京義線鉄道・道路連結工事再開と金剛山陸路観光に向けた南連結道路建設――など、体制の根幹にかかわる難問に遭遇せざるを得ない。
 それに対し、韓国に期待する大型電力支援やインフラ建設支援などは、米国の抑制や韓国の政治・経済事情から実現の可能性は乏しく、南北対話再開が米朝関係改善に及ぼす影響も期待できない。つまり、十分な見返りは望めない状況だ。
 とすれば、朝鮮半島を取り巻く国際情勢や韓国の国内事情に画期的な変化がない限り、北朝鮮が積極的に南北関係改善に出てくる可能性は極めて乏しい。南北関係はこのまま冬の時代を迎えてしまうのだろうか。

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