国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1895号 (令和8年3月15日)

有事法整備年内成立めざし再構築を

思想新聞2002年8月15日号【主張】

 有事関連法案が先の通常国会で継続審議となったことはきわめて残念なことだ。国家としてとっくの昔に整備されていなければならない有事法制が戦後初めて国会に上程されたというのに、政治腐敗追及のドタバタ劇の陰に隠れて十分な審議もなされず継続審議となってしまった。これを「雨降って地固める」とすべく、年内成立をめざして有事関連法案を再構築しておくべきだ。

スパイ防止法も新たに上程せよ

 政府が国会に提出した有事関連法案は、第一には武力攻撃が発生した事態または事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態への対処を定めた「武力攻撃事態法案」、第二には武力攻撃事態等に対処するに際して安全保障会議の役割を明確かつ強化する「安全保障会議設置法改正案」、第三には自衛隊が防衛出動を命じられたときにその任務をより有効かつ円滑に遂行し得る諸態勢を整備する「自衛隊法改正案」などだ。
 いずれも有事態勢を構築しておくうえで欠かせないものといえる。継続審議となった同法案は当然、10月に開催予定の臨時国会で成立を期すべきである。
 これに対し一部に冷戦時代の古い発想の戦争はもはや起こらないとの批判もあるが、北東アジアには冷戦構造が残っているし、仮に冷戦構造が終わってどのような情勢になろうとも、武力攻撃を受ける可能性がゼロでない限り、独立国家として有事法を整備しておくことは当然の「国家の固有の権利」であり、国民に対する義務である。
 しかし、継続審議になっている有事関連法案だけで十分かというとそうでもない。この際、不備な点も考慮してトータルな有事法整備を目指すべきだと我々は考える。
 国家の平和と安全が脅かされるのは武力攻撃(直接侵略)だけではない。間接侵略と呼ばれるテロ・スパイ工作などがあり、これこそ現代的脅威とされている。たとえば大規模テロや武装不審船や武装工作員の侵入、あるいはサイバーテロなどの事態が想定され、これらが仮に国家でない国際テロ組織の犯行であっても間接侵略と見なすのが、国際的常識である。だから各国とも直接、間接を問わず、脅威には自衛権行使という視点で対応しているのだ。
 今回の政府案はこうした間接侵略への対応が欠落している。これでは有事法制ができても不審船事件にも大規模テロにも対応できないとの批判が国会審議で出されていた。
 先の不審船事件では、海保巡視船は警職法による「正当防衛」でしか危害射撃をできなかったことから、海保のみならず自衛隊に対しても領土・領海・領空を警備する任務を与える「領域警備法」を制定する必要性が指摘されてきた。だが、政府はこうした危機への対応策を棚上げにしている。
 また平時の対応としてスパイ防止法整備が欠落しているとかねてから指摘されている。
 8月には陸上、航空両自衛隊の情報データ通信システム(部隊内LAN)の設計資料の一部が外部に流出していた事件が発覚した。外部に漏れたのは、陸空両自衛隊のホストコンピュータと各基地のパソコンをつなぐデータ交換網と、各端末の住所に当たるIPアドレスや経路図など、防衛庁の極秘情報がやりとりされる「パイプの路線図」(同庁幹部)である。
 仮にこれが外国の軍事スパイに流出していた場合、有事の際に指示系統が丸裸となり、サイバー攻撃を仕掛けられて国家の安全保障が大打撃を受ける重大情報である。
 情報保護は国家の安全保障の根幹に関わる重大事でありながら、国家機密保護法(スパイ防止法)が未整備なままなのである。国家体制の根本的欠陥と言っても過言ではない。
 したがって臨時国会にはスパイ防止法案も上程して間接侵略・スパイ工作への態勢づくりも図っておく必要がある。
 また有事法制といいながら、避難誘導や被害の復旧措置などをはじめとする国民の権利を保護する法案がないのは国民軽視との批判が国会審議で出た。たしかに国民保護法案は必要不可欠といえる。政府もこの点を認め、2年以内に整備するとしているが、これを早め、民間防衛法案と国民保護法案を有事関連法案に合わせて臨時国会に提出できるよう努力すべきである。
 さらにいえば、集団的自衛権行使や緊急事態条項の設定など憲法改正も視野に入れておかねばならない。少なくとも国連憲章で国家の固有の権利として認められている集団的自衛権行使を躊躇する理由はない。集団的自衛権を保持しているが行使は違憲などとする馬鹿げた政府解釈を改めなければならない。
 これは法案そのものがいらない。政府解釈を閣議決定すれば済む話だからである。いずれにしても、トータルな国家安全保障策の確立を臨時国会、すなわち年内に図っておかねばならない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました