思想新聞2002年7月15日【ニューススコープ】

元気印ロシア、正式加盟
さる6月26~27日の2日間、カナダ・アルバータ州のカナナスキスにおいて主要国首脳会議(カナナスキス・サミット)が行われた。昨年9月11日の米同時多発テロ以来、初めての頂上会議として注目された。会議の議題は昨年のジェノバ・サミットに続きテロ対策における主要国の結束が強調されたが、より重要な問題として「テロの温床」として指摘されている「貧困・経済格差」解消への対策ということで、特にアフリカ諸国を中心にODA(政府開発援助)の強化が確認されるとともに、発展途上国などの子供たちへの初等教育無償支援構想のための報告書も発表された。
また、日本経済の再建はもとより世界同時株安など世界的に抱える経済問題も審議された。ゴルバチョフ大統領以来、サミット参加を定着させてきたロシアが、名実ともに完全「G8」(主要八カ国)メンバーとしてサミットの一員となったことが注目すべき点で、2006年には議長国としてサミットを主催することが決まっている。
カナダ西部、アルバータ州のカナナスキスは、1998年の冬季五輪開催地カルガリーから110キロ、ロッキー山脈の麓にあるリゾート地だ。
昨年のジェノバ・サミットにおいて「反グローバリズム」を唱える激しいデモが展開され、死者が出す事態になったこともあったためか、今回、議事の進められたカナナスキスには報道陣もシャットアウトするなど、議長国当局の苦慮のほどがうかがえた。そのせいかどうかわからないが、各報道機関の解説は、辛口で口をそろえて「米国の一人舞台」というものが大勢を占めた。
特にそれが顕著であったのは、中東和平に対する米国案への評価である。アラファト議長の退陣を前提としたパレスチナ暫定国家創設案だが、概ね各国の理解を取り付けた形となった。
確かに、米国が動かなければ始まらないのがポスト冷戦時代のサミットであると言ってよい。しかし、だからと言って米国が決して「元気」というわけではない。テロ攻撃からの奇跡的復興は遂げたものの、経済に関しては株安や企業の不正経理操作など不安材料を多く抱えている。もっとも、議題での世界経済の見通しはかなり楽観的なものに落ち着いた。日本の改革への継続的取り組みもその流れで承認された。
むしろロシアの方が、先の5月の米ロ首脳会談において、戦略核削減条約に調印、NATO(北大西洋条約機構)と共同意思決定機関の創設に合意し準加盟国となったこととも相まって、積極的な対米・対欧外交が功を奏していると言える。これはもちろん、米同時多発テロを境として、米国の軍事戦略が大きく見直しを余儀なくされたことによる。そのために「西側」同盟諸国はもちろん、あらゆる国々に対し働きかけ、対テロ包囲網を形成する必要があった。
だからこそロシアの対テロ戦略において共同戦線を張る必要があった。米国は中国に対しても相当の譲歩による配慮を見せた。そうしたことともあわせると、米国はある意味で戦略的にロシアを「西側」の土俵に引っ張ってくるということに成功したとも言える。逆に言えば、ロシアは「元気」ついでに「G8」のルーキーとして2006年のホスト国の座を手にしたとも言える。予定国であったドイツの譲歩を引き出した形だが、いずれにしても対EU外交の成果と見なせるだろう。しかも、「大量破壊兵器拡散防止のための行動計画」(グローバル・パートナーシップ)により大量破壊兵器解体に際しG7諸国から200億ドルの援助を取り付けた。
一方、日本はと言えば、さしもの小泉首相も、ASEAN歴訪で提唱した「東アジア共同体構想」のような見るべきものはなかった。その上、ロシアとの北方領土交渉は進展せず、ムネオ問題に揺れた後の対ロシア外交は建て直しが急務だが、国債の格付け下落と同様、相対的な地位の低下を指摘する向きもある。
また、もう一つの軸が「アフリカ開発のためのパートナーシップ」(NEPAD)で、7月9日に発足された「アフリカ連合」(AU)の中核となると見られる。G8のODA半数以上をアフリカに充てることに合意。
「米のシナリオがロシアG8完全参加で実現、新世界秩序が幕開け」とした産経新聞の解説記事(前田徹記者)が、今回の「歴史性」を見事に言い当てている。
それだけに、こうした「G8によるワールド・ガバナンス」が実質的意義を深めれば深めるほど、国際機構としての国連(UN)のもつ役割が見直されざるを得なくなってくる。国連の実質的国際調停力が疑問視され、「仲良しクラブ」化が指摘される国連の意義がさらにいっそう問われてくることになりそうである。国連はスイスを「加盟国」として糾合するなど、新たな動きが見られなくもないが、全般的に山積すると言われる国連改革も遅々として進む気配もない。それを象徴する事態がアナン事務総長の昨年のノーベル平和賞受賞に対する疑問視する声である。
ともあれ、「世界の富の7割以上、核兵器だと99%を独占する8カ国による世界統治(ワールド・ガバナンス)」(産経)という構図は、従来以上にサミットの意義を強固なものにしたと言える。
◆サミット議長総括骨子◆
○テロに対する持続的、包括的な行動を取る
○ロシアの大量破壊兵器解体に今後10年間で最大200億ドルを拠出することで合意
○G8と世界経済の成長見通しに自信を表明
○経済改革の成功には強力な政治的リーダーシップが根本的に重要
○新興市場国の健全な経済政策への努力を支持
○保護主義的圧力への抵抗で合意
○「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD)支援の枠組みとして「G8アフリカ行動計画」を採択
○イスラエルとパレスチナの併存を基礎とする中東和平達成に向けた作業に関与


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