この記事は2011年5月1日に投稿されました。
国際勝共連合会長 梶栗玄太郎
国内観測史上最大の三陸沖を震源とする地震と津波により、東北地方沿岸部を中心に広範囲にわたって甚大な被害が発生いたしました。人的・物的被害は想像を絶する規模であり、亡くなられた方々や多くの被災者に対し、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
また、地震と巨大津波による福島第一原発事故は放射能物質による汚染を引き起こし、冷やして封じ込める作業は困難を極め、国内のみならず世界中に不安が拡散し、今や日本に対する国際的信頼を大きく失墜させることとなってしまいました。
今後、復興、振興策へと取り組みの中心が移行していくこととなりますが、このたびの災害と事故によって未曾有の被害が生じた事実を、単に「想定外」で済ます訳にはまいりません。危機管理の原則(「最悪に備える」)に照らしながら総合的に経緯を調査し、この経験を今後の教訓として生かして、より安全な環境づくり、国づくりにむけて再出発しなければならないのです。それが今生きている私たちの使命であると信ずるものであります。
未だ救済、救援、復興、振興のすべてのレベルにおいて進行中ではありますが、これまでの政権の対応についてみてみましょう。
問われるリーダーの資質
まず、原発事故処理に関する初動の遅れがありました。その一つは、事故の深刻さをみて原発先進国であるフランス、米国が事故処理に関する協力の申し入れに対して日本側が断ったことであります。福島原発(東京電力)の原子炉を設計したのは米国のGE(ゼネラル・エレクトリック)社です。米、仏との協力関係はもっと早く行われるべきでありました。
二番目に、国のトップリーダー(総理)自らが原発事故直後の現地視察(勉強のために?)をおこない、職員が事故現場に集中できない時間が生じ、また建家の水素爆発により現場の職員が一時避難するとの報告を聞いた総理が東電本社で一時間以上にわたり叱り続けたとのことでありますが、国のトップリーダーが行うべきことではありませんでした。危機管理においてリーダーは、情報を収集、判断し、なすべきことを決断し指示しなければなりません。危機に陥った組織が大きければ大きいほどトップリーダーは動くべきではないのです。誰かが救済、救援策を決断しなければ何も進まないのです。その為の情報収集と判断を冷静に行わなければならないのです。
三番目に、極めて不思議なことでありますが、「国防に関する重要事項および重大緊急事態への対処に関する重要事項を審議」する為の「安全保障会議」(議長は内閣総理大臣)がこれまで一度も開かれておりません。また、「災害対策基本法」にある「中央防災組織」の会議も開催されておりません。議長は内閣総理大臣です。いずれも、今開催せずしていつ開くのかという性格のものです。法律では、地方防災組織は県単位となっており、議長は県知事でありますが、このたびの大災害のように県単位の取り組みは意味をなさず、原発事故も県単位で対応できるものではありません。なおさら中央防災組織が大きな役割を果たさなければならないのですが、議長である総理は一度も開催していないのです。
「一番肝心なものがない」日本
米国「9・11」同時多発テロ事件を経験し、その後の対応が大きく評価されたジュリアーニ元ニューヨーク市長は、このたびの災害について貴重な提言をしています。▽震災(地震と津波)対策と原発事故対策とに指揮系統と責任を明確に分けること▽官僚組織をうまく使うこと▽毎日最高責任者が朝何時と時間を決めて全組織の代表があつまり、今日の目標を決定し直後に記者会見を開くこと。それを毎日繰り返し、是正をしながら一日ずつ一日ずつ状況判断して、目標を決め、それを全体がわかるようにするという処理を続けるべきであるというのです。
最後に根本的課題を述べておきます。わが国には最も肝心な「国を守る」為の行動を支える法的根拠がありません。憲法に「緊急事態条項」がなく、法律としても「緊急事態基本法」がないのです。武力攻撃を受けるなどの「有事」や大災害、内乱、テロ、原発事故などから国を守る(国民の生命と財産、主権と国土を守る)為に、私権の限定的制限を含む救済、救援、復興措置を内閣総理大臣の権限の下で宣言し実行する為の基本法がないのです。
国を守るための措置を、法的根拠をもって果敢に実行できるようにすることこそ、今生きている者の義務であると確信いたします。会員の皆様、一緒に行動いたしましょう。
2011年5月1日


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