【思想新聞2001年11月1日号】マスコミ論壇ウォッチング
9月11日のテロリストの攻撃に端を発した今回の危機に際し、一部にいまだに共産主義や社会主義を国是とする国々をも含む国際社会が、全体として今回のテロリストの蛮行を非難し、米国の軍事力による制裁についてやむを得ないとして支持を表明したことは、国際社会が米ソ対立に象徴されるイデオロギーの制約から解き放たれ、程度の差こそあれ「人道」や「民主的手続き」を無視した暴力の行使を否定する次元へと到達しつつあることを象徴しているといえよう。その意味で西側民主社会がその成熟過程においてテロリズムを封じ込めた経験は、国際的な規模での「対テロリズム闘争」に生かすことができよう。
ところで、今回の戦いでは「情報」の重要性が繰り返し説かれ、米国側もタリバン側も様々な形態での情報戦、神経戦を展開している。その中で、先頃『朝日』を舞台としたある報道写真をめぐる出来事について報告したい。
10月9日付の『朝日』夕刊は、「暗やみ うなる砲弾」という大見出しと空爆を報じるCNNの画面と共に、ロイター通信が「米軍による8日の爆撃で左足と右手の指を失った十代のアイスクリーム売りの少年」というクレジット付きで配信した写真を掲載した。まさしく、米軍の空爆は民間人にも多大な犠牲を強いているというタリバン側の主張を裏付けるインパクトのある写真であった。
それから3日後の13日、『朝日』夕刊の14面の隅に「9日付掲載の写真説明は『地雷を踏んで8日病院に搬送された』と訂正します。配信したロイター通信の再取材で、少年の負傷の経緯について誤りがあったことが判明しました」という」との「訂正」が小さく載った。
「訂正」が事実とすればロイター通信の努力は多とするが、読者に与える印象が決定的であることを思うと、その「訂正」はあまりに小さく、既に誤報が与えたイメージを修正するには申し訳程度にすぎないと感じるのは筆者だけではあるまい。今回の戦いにおける「情報」の占める位置の大きさを考えると、あまりに後味の悪さが残ると言わざるを得ない。


コメント