【思想新聞2001年11月1日号】アセンブリ2001 特集スピーチ集
アルノー・ド・ボルシュグラーブ
UPI通信 編 集 顧 問

9月11日までは、米国のメディアは国外の問題についてほとんど報道してこなかった。冷戦の終結以来、米国のメディアはモニカ・ルインスキーやO・J・シンプソンなどの話題に集中してきたので、われわれは現在の世界を形作ってきた新しい力、とりわけイスラム世界の力に関して、目を閉ざされていたのである。
ソ連が崩壊し、湾岸戦争が米国の勝利によって終結して以来、米国のメディアは海外のニュースを取材することよりも、より経費のかからない国内のメロドラマに関心を集中させるようになった。ジャーナリストの使命は、重要な話題を取り上げて、それを面白くすることだった。彼らにとっては、ビンラディンなどよりもモニカ・ルインスキーの話題の方がはるかに重要だった。しかし、9月11日からは状況は一変した。
この日を迎えるまで、テレビはしばしば世界の重要なニュースを無視していた。だからアメリカ人の99%は、ビンラディンが16ヶ国に世界的なテロのネットワークを築いていたという事実を知らなかった。パキスタンのイスラム教の学校で米国に対する憎悪が教育され、アフガニスタンのテロリスト候補者が養成されていることも知らなかったのである。米国の失敗は、まさに外の世界に対して関心を持たなかったことにある。
冷戦の終結以後10年間、クリントンの2期を含む3つの米国の政権は、いわゆる民主主義と資本主義を世界に広めることを追求してきた。これは「文化的覇権主義」あるいは文化の強制的輸出であると受け取られて反感を買い、アメリカの文化侵略に対して立ち上がる者たちが出てきたのである。
中東諸国の国民は、アメリカがイスラエルを軍事的に助けることを通して中東に対する覇権を保持しようとしているととらえている。サミュエル・ハンチントン教授が言った「文明の衝突」という有名なテーゼは、徐々に現実になっていったのである。
9月11日の事件は、冷戦が終結した後に民主主義の名のもとに行われてきたことが、過激派のプロパガンダによって破壊されたことを意味する。残念ながら、パキスタンの国民は70%が文盲であるため、一般大衆は新聞などの文書を読むことができない。だから、彼らは人から言われたことに影響されて、「邪悪なアメリカ帝国が戦争をしかけようとしている」と信じているのである。
これは貧困の問題でもある。湾岸諸国にはいまだに封建的社会体制が残っている。貧しい少年たちが授業料のかからないイスラム教の学校で教育を受け、訓練を受けてテロリストに育って行くのである。
彼らは、イスラエルのモサドが、オサマ・ビンラディンとアルカイーダを陥れるために9月11日の事件を起こしたと信じている。その根拠は、その日世界貿易センターにいるはずだった4千人のユダヤ人がどういうわけかいなかった、というものだ。これは非常に薄弱な根拠に基づく噂に過ぎない。しかし、こうしたプロパガンダがパキスタンで非常に有効に働いているということは驚くべきことだ。
この事件を通じて、米国の主流メディアが世界の問題にもっと関心を払うようになることを望む。米国は、自国の外において自分たちがどのように認識されているのかを知らなければならない。そして、9月11日を人類の再出発の日にしなければならない。
略歴:UPIおよびワシントン・タイムズの編集者。ニューズウィークの上級編集者ならびに首席海外特派員として、多くの世界の指導者にインタビューしてきた。ジョージタウン国際戦略研究所上級顧問。著書に『スパイク』『モニンボ』などがある。


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