思想新聞2003年8月1日号【1面top】
「有害環境」の一掃を
小6女児監禁事件の教訓

長崎の12歳の中学1年男子生徒が幼児殺害を引き起こしたのに続き、小学6年の女児4人が誘拐監禁される事件が起こり国民に大きな不安を与えている。少年は前者が加害者、後者が被害者とそれぞれ立場は違うが、いずれの事件も青少年の健全育成の在り方に深刻な問題を投げかけている。少年犯罪が深刻さを増す中で、凶悪事件に巻き込まれる少年少女が激増しているが、こうした悲劇を招いている最大の要因は「性モラル」の低下にほかならない。家庭と学校、さらには地域の教育力が低下する中で、インターネットや携帯電話など新メディアが子どもの身近に溢れ、その分、少年少女たちは有害環境にさらされている。青少年をどう健全育成するか、日本は戦後最大の岐路にたたされている。
東京都港区のマンションで小学6年の女児4人が4日間にわたって監禁された事件は、少女たちがいかに有害環境にさらされているかを見せつけたといえる。
事件は女児の1人が自殺した容疑者から「友達を連れてくればもっとあげるよ」と1万円の小遣いをもらったのがきっかけ。女児と容疑者を引き合わせたのは風俗店や性犯罪を誘うアルバイトをしている女子高校生で、甘言に乗せられて女児は友達を誘い7月13日、東京都渋谷区のJR渋谷駅前からタクシーで港区赤坂のマンションに行き、同17日昼すぎに助け出されるまで丸4日間、監禁されていた。
この事件は現在の少年(少女を含む)を取り巻く環境を象徴しているといえる。JR渋谷駅界隈など都心の歓楽街は犯罪都市化しつつあるほど「治安の悪化」が著しい。にもかかわらず、こうした歓楽街は少年らの“憧れの場所”になっており、地方からの修学旅行のコースにもされているほどだ。
東京都で新たに治安担当の副知事に就任した竹花豊氏は「長崎の事件では低年齢者が加害者になり、今回は被害者になっている。社会全体が『被害者にならない』『加害者にならない』と掛け声をあげて治安悪化に対抗する社会を構築しなければならない」と述べているが(産経7月18日)、治安悪化の二大要因が外国人犯罪と少年犯罪だ。このうち今回は少年犯罪(加害者と被害者)が立て続けに発生したといえる。まず少年が被害者になるケースが激増していることを注視すべきだ。
昨年1年間に20歳未満の少年が被害者となった刑法犯の認知件数は約46万6千件で、2年連続で40万台を超えている(うち小学生は3万人)。中でも殺人や強盗、婦女暴行などの凶悪犯罪に巻き込まれたのは約2千百人にのぼっており、ここ10年で最も多い。わいせつ事件での被害者も約5千7百件ときわめて多いのだ。
このように少年の被害が増えている背景には少年側にもその原因があると指摘されている。監禁された小6女児の一人の自宅からは性風俗のチラシが見つかっており、携帯電話を持ち歩いて容疑者と連絡を取り合っていた。小遣い銭ほしさに安易に容疑者の口車に乗せられていることからもそれが窺える。
昨年一年間に深夜徘徊や喫煙などの不良行為で補導された少年少女は120万2千人に上っており、これもここ10年で最高だ。監禁事件を受けて警視庁は7月18日夜から19日早朝にかけて、渋谷センター街など盛り場を中心に都内で一斉補導を行ったが、たった一晩で検挙・補導したのは小学6年6人を含む1523人に上った。
子供たちのモラル低下も著しいのだ。とりわけ性モラルの低下が甚だしく、新宿・歌舞伎町や渋谷センター街などのコリコン(少女性愛指向者)系のデートクラブに出入りする少女も絶えないという。そこから援助交際という売春に走っていく少女も少なくない。こうした性モラルの低下が被害者急増の要因になっていると専門家は見ている。
6月に児童買春や売春の温床とされる「出会い系サイト規制法」が成立、出会い系サイトで児童(18歳未満)に性交渉や金銭・物品の授受を伴う交際の勧誘をした場合、百万円以下の罰金が科せられる。さらに誘った児童も罰則の対象となり少年法の規定で保護観察などの保護処分となることが決まった。
児童も罰則の対象にするのは、出会い系サイトの児童買春事件の94%が児童からの誘いだったからだ(昨年上半期、警察庁調べ)。これまで買春児童は被害者だったが、今後は誘った場合は加害者になる。ここにも少年犯罪の「被害者か加害者かわからない」(鴻池特命相の国会答弁、後に撤回)という一面が見られる。
性モラルの低下が今回の監禁事件の背景にあることは疑いない。容疑者は児童買春事件の前科があり、自宅には大量のわいせつビデオとその販売チラシ、顧客名簿が発見されている。
最近の中高生の性モラルの低下は、例えば中高生の45%が「セックスで小遣いをもらうのは本人の自由」、女子中高生の67.7%が「愛がなくてもセックスしていい」と答えている点からも窺える(警察庁調べなど)。
こうしたことから明らかなのは、少年の犯罪被害を防止する最大の策が「性モラルの向上」にほかならないということだ。しかし、学校では逆に性過激派教師グループが「性交教育」を推進して性モラルの低下を自ら指揮し、あるいは「隔離よりも免疫化することが大事だ」(宮台真司・都立大助教授)などと称して性情報の氾濫を煽っているかのような知識人まで登場している。
戦後日本が価値の多様性の美名の下に性モラルを崩壊させてきたツケが、今回の少女監禁事件で象徴される少年被害者の急増といっても過言ではない。このことは少年犯罪の加害者側にも言える。親の愛情不足がちの子どもが内にこもってホラービデオやアダルトビデオを見続け、猟奇殺人に至った例が多数報告されている。宮崎勤被告も神戸少年事件も、そして今回の長崎事件の12歳少年も「性サディズム」だとする性癖が指摘されているところだ。
だから性モラルの崩壊に毅然と立ち向かわない限り、少年少女の犠牲を減らすことはできないことは明らかだ。少年が自由に出入りできるコンビニに「有害図書」が並んでいても平気で見過ごしてきた親たちの責任も小さくない。出会い系サイトだけを規制しても始まらない。わいせつ情報が溢れるインターネットなども野放しにしておくわけにはいかない。「有害環境」を一掃し、日本をして道徳大国へと転換させねばならない。


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