国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1898号 (令和8年5月1日)

テロの一掃、立ち上がる国際社会西欧・イスラムの「文明の衝突」回避せよ

思想新聞2001年10月1日号 【1面】 米国同時多発テロ

文総裁が提唱 国連に「宗教議会」の設置を

テロ犠牲者追悼集会には宗派の違いを超えユダヤ教・イスラム教の聖職者や米国の現前元大統領夫妻が参席(9月14日ナショナル・カテドラル=ロイター・サン)

 米国の「中心」を急襲したテロ。その犠牲者は1万人を超えると予想される。人々は、悲しみと怒りの感情を引きずりながらも、平和の破壊者・テロリスト根絶を目指して、かつてない団結と着実な取り組みを見せている。ブッシュ大統領のリーダーシップに対して、米国民の90%が支持(9月23日、ギャラップ社とUSAトゥデー紙、CNNテレビの合同世論調査結果)。大胆かつ慎重なテロリスト一掃戦略が進められており、それは、米本土防衛作戦「ノーブル・イーグル」、軍事作戦「不屈の自由」とよばれている。

イスラム教を怨讐視すべきではない

 去る9月24日、ブッシュ政権に主要な容疑者と名指しされたウサマ・ビンラディンは、パキスタン国民にあてた声明文をカタール(アラビア半島中部東岸の首長国)の衛星テレビ局「アル・ジャジーラ」にファクスで送った。声明文は「パキスタンのイスラム教徒同胞に、パキスタンとアフガニスタンを侵略しようとする米国の十字軍を全力で阻止するよう呼びかける」と記され、「我々は今、揺るぎないジハード(聖戦)の途上にあることを確信する」とし、「アラー(イスラム教の唯一神)の名の下」でイスラム教徒の結集を求めるものだった。
 テロリストは、いわゆるイスラム教徒とイコールではない。アラブ人ともイコールではなく、さらにイスラム法(シャーリア)通りの国家作りを目指すイスラム原理主義者(根本主義者)ともイコールではない。事件直後、中東・アラブ・イスラム諸国から、またイスラム教各派の最高指導者たちから多くの声明が出されたが、それを見れば明らかである。
 事件当日の9月11日に、ムバラク・エジプト大統領、ヨルダンのアブドラ国王、カタールのハマド外相、イラン・ハタミ大統領、アラブ首長国連邦・アブドラ情報文化相などがテロ行為を強く非難した声明を発表。13日にはシリアのアサド大統領も「あらゆる面で世界が協力してテロを一掃すべき」と発言。リビアの最高指導者カダフィ大佐も「政治的な違いではなく、人道面を考慮すべき」と、犠牲者への人道的援助を申し出ている。
 9月14日、イスラム教スンニ派の最高指導者であるエジプトの「アズハル寺院」聖職者タンタウィ師は「罪もない人々を攻撃するような者は審判の日に罰せられるだろう」と発言。イラン・シーア派聖職者エマミ・カシャニ師も「無防備な人々を襲った運命にどうして無関心でいられるだろう」と語り、レバノンのファドラッラー師も「イスラムの価値に沿って生きている人間にはこんな犯罪は犯すことができないはず」と発言し、イスラム教が平和の宗教であることを強調している。
 そしてブッシュ大統領は9月13日、「アラブ系米国人も我々と同じように星条旗を愛している」「イスラム教徒であるからといってテロに責任があるわけではない」と述べ、テロリストに対する認識のあり方を繰り返し語っている。これはあくまでも「国際社会とテロリストとの戦い」なのである。

ウサマ・ビンラディンと「アル・カーイダ(砦)」の思想

 1998年2月23日、「アル・カーイダ」に関係したすべてのグループがアフガン内部の基地で会合を開き、「ユダヤ人と十字軍に対する聖戦の為の国際イスラム戦線」の名の下に、宣言文を発表した。同文は「米国は7年以上にわたって、アラビア半島の最も神聖なる土地(注:イラク攻撃の際、米国は基地をサウジアラビアに設置、湾岸戦争後もイラク監視の為残された)、イスラムの土地を占領し、その富を奪い、土地の支配者に指図し、人民を服従させ、隣接国を恐怖に追い込み、半島内の基地を隣接国のムスリム人民に対する攻撃に利用しようとしている」と主張。さらにこの会合でイスラム教令(ファトワ)が発せられ、「軍人、民間人を問わず、アメリカ人とその同盟者を殺すという決定は、どの国で実行できるかを問わず、ムスリム一人一人に与えられた個人的な義務」としている。
 先鋭化した彼らの思想は、戦いの目的をユダヤ・キリスト教文明の破壊に置き、「米国の価値(民主主義と市場原理)はイスラムの価値を犯すもの」と断言している。冷戦時代、共産主義イデオロギーの前には、妥協と対話が意味を持たなかったことと同じである。結局、現時点でとりうる最高の策は、彼らをして、孤立から自壊への道をたどらせる為、国際社会が団結することなのある。

国連はどう動いたのか

 国際社会を代表する機関は国連である。テロを根絶させる為には「国際社会対テロリスト」という構図が不可欠であることを考えれば、当然国連に対し大きな期待がかかる。それでは今回のテロ事件に対して国連はどう動いたのだろうか。
 事件翌日の9月12日、国連安全保障理事会および総会が開催され、「テロリストの攻撃に対応するため、あらゆる手段を講じる」とのテロ非難決議が行われている。そこには軍事行動を支持するとの文言はない。
 米国を中心に軍事作戦準備が進む中で、アナン国連事務総長は19日、米国が同時多発テロへの報復に踏み切る前に、新たな国連安保理の決議が必要か否かについて、「安保理はすでに決議を採択している」と述べている。コンドリーサ・ライス米大統領補佐官もまた19日、軍事行動には新たな国連決議を求めないとの見通しを示した。
 アナン事務総長は、テロに対抗する協力態勢を構築するのが急務としたうえで、「できるだけ多くの国に参加してもらうことが重要」と指摘。より具体的な内容の決議(軍事行動支持決議)を改めて採択すれば、幅広い参加が難しくなるとの考えを示唆した。フランスのシラク大統領も「安保理はすでに行動をとった」と述べている。
 国連に新たな決議を求めないもう一つの理由がある。この種の戦いに直接に関わりうる「国際法的根拠」がないのだ。これは、イラクによるクウェート侵略という明らかな憲章違反(内政不干渉の原則違反)に対する制裁行動としての湾岸戦争型ではない。相手はテロリストであって侵略国家ではないからである。

テロリストを宗教的に孤立させよ

 ブッシュ政権の戦いの第一幕は、国際的連帯と力による威嚇を背景に、アフガン・タリバン政権に圧力をかけ、ウサマ・ビンラディンと「アル・カーイダ」保護の停止と、テロリストへの資金源断絶を目指し開始されている。「いぶり出し戦術」だ。特殊部隊の投入もすでに行われているという。今後の展開によって、米国らによる軍事行動が民間人を犠牲にするものとなれば、国際社会対テロリストの構図が崩れ、ユダヤ・キリスト教文明対イスラム文明の戦いという「文明の衝突」へと拡大する危険性がある。イスラム諸国の米国への協力は、それほど強固なものではないはずで、作戦は極めて慎重に進められなければならない。
 ここで、文鮮明FWP総裁の10年来の提言に世界は耳を傾けるべきである。文総裁は国連に「宗教議会」を設置すべきとの刷新案を、99年韓国・ソウルで開催された世界平和超宗教超国家連合創設大会における記念講演において提唱。さらに、国連において直接メッセージが語られたのは、昨年8月のこと。現在の国連総会は国家の代表によって構成され、国家の枠を超えたもの、またその枠内の問題に対して直接関わることはできない。九九年のNATO軍によるユーゴ空爆は、ユーゴ内のコソボ自治州で発生した問題であった為、国連が関わることはできなかった。国際テロリストへの対応も国連が直接関わりうる「国際法的根拠」がないのである。
 国連は刷新されなければならない。世界の宗教指導者等を中心に「宗教議会」を設置し、諸宗教の和解と調和のための不断の努力を重ね、紛争の予防や対処、さらには「平和の理念」の発信地となるべきである。さらに「宗教議会」の宣言によって、今回のようなテロリストを宗教的に孤立させることが可能となる。政治的孤立や資金的孤立だけでなく、宗教的にも孤立させ、悲劇の繰り返しに終止符を打たなければならないのである。

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