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自民党総裁選 物足りない「骨太」の政策論争

思想新聞2003年9月15日号【主張】

 自民党の総裁選が告示され、小泉純一郎首相のほか、藤井孝男元運輸相、亀井静香前政調会長、高村正彦元外相の四氏が立候補した。高支持率を保つ小泉首相に三氏が挑んだ今回の総裁選は「構造改革」をめぐる経済政策が焦点になっているが、これでは物足りない。骨太の国家ビジョン論争を積極的に展開すべきだろう。

国の座標軸が不明確なまま

 いま日本の座標軸として問われているのは、・国際貢献主義か一国平和主義か・大きな政府か小さな政府か・家庭主義か個人主義か・伝統尊重か唯物主義かの四点に集約することができよう。
 第一の座標軸では自民党は言うまでもなく国際貢献主義に立っている。自民党政権下でわが国は、自由主義体制をとり世界との関わりでは貿易立国となることによって経済成長を遂げたことは周知の通りだ。だから自民党は一国平和主義とは一線を画してきた。
 だが、それが今、揺らいでいる。世界の中で生きていくためには、国際社会でしかるべき役割を果たさねばならず、それがなくては国際貢献国家たり得ない。その第一の関門が安全保障面での国際貢献である。自衛隊の海外派遣を確固たるものにすべく、集団的自衛権行使をはじめ法的整備を明確にしなければ、いつまで経っても半人前国家から脱せない。
 このことについて四候補ともはっきり言わない。藤井、亀井両候補はイラクへの自衛隊派遣を慎重にすべきとし、亀井候補はイラク戦争に反対している。では、どんな国際貢献を想定しているのか、まったく見えてこない。小泉首相は「日米同盟と国際協調の重視」という抽象論に終始し、高村候補はその小泉外交を概ね妥当とするだけである。何とも物足りない。
 第二の「政府論」では自民党は70年代までは「大きな政府」を志向し、オイルショックで財政が行き詰まった80年代以降は「小さな政府」へと転じた。小泉首相は「小さな政府」をさらに徹底しようと構造改革路線を推進している。これに対して三候補は景気回復先行・構造改革後送りで一致している。
 ここが際だった対立点のように伝えられるが、四候補とも地方分権推進では歩調を合わせており、将来的には「小さな政府」を目指しているよう見受けられる。その「小さな政府」のバロメーターが社会保障への関わりとされるが、四候補とも社会保障像は曖昧模糊としている。どのレベルの政府で臨むのか、はっきりしないのだ。ここでも物足りなさは否めない。
 第三の家庭主義か個人主義かについては四候補とも眼中にないようだ。しかし、これは国際的にも大きな抗争軸となっていることを忘れてはなるまい。
 米国は行き過ぎた個人中心主義が良きアメリカの伝統を破壊し、家庭がないがしろにされて犯罪社会を招いたとの反省から九〇年代以降、「家庭の価値」を政策の柱に据えた。そして、青少年育成や税制、社会保障、治安対策など多岐にわたって家庭を重んずる視点で政策立案につとめた。それが米国の再生をもたらしたとされる。
 これに対して個人主義を掲げるマルクス主義勢力は、家庭の価値を破壊すべく、ジェンダーフリーや同性愛の保証など伝統文化の否定施策を採用させようと暗躍し、米国各地で論争を呼び起こしてきた。
 この流れは日本にも持ち込まれ、男女共同参画社会をジェンダーフリー社会へと転化させ、学校教育の場に過激な性教育を導入させて権利の名のもとにフリーセックス社会を作りだそうなどと暗躍している。また夫婦別姓や年金・健康保険などの社会保障施策でも家庭単位を壊して個人単位にしようとの画策が進んでいる。
 こうした流れは第四の座標軸に連動し、伝統尊重を否定することによって宗教的風土を破壊し唯物的な国づくりへと誘導することになる。
 小泉首相はこうした価値観問題にはほとんど関心を示さない。教育基本法については藤井、亀井両候補が文化、伝統の継承を掲げて改正を明確に主張するものの、高村候補は言及しない。これも物足りない。

憲法改正への具体案はなし

 憲法改正問題では小泉首相が改憲を口にしながら公約から外したのは解せない。亀井候補は2年以内に憲法改正試案を策定し3年以内に国民投票を実施するとの日程を上げたのは評価できる。高村候補は憲法改正の機が熟したとして党の改憲案作成に賛意を表している。だが、両候補とも改憲の中身には触れていない。
 このように四候補の政策とも骨太の国家ビジョンが著しく欠落しているのだ。ダイナミックな変革の時代に何ともこじんまりしすぎた総裁選に陥っているのは残念である。

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