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米一般教書演説「ブッシュ・ドクトリン」が加速

思想新聞2003年2月15日【ニューススコープ】

イラク武装解除 秒読みに
国際秩序構築の試金石に

一般教書演説でイラクへの断固たる姿勢を吐露したブッシュ大統領(1月28日、米連邦議会=ロイター・サン)

 国連査察の完全受け入れか、それとも米国のイラク攻撃による大量破壊兵器破棄か。ついにイラク情勢は秒読みの段階に入ってきた。ブッシュ米大統領は1月28日、米国の基本方針を示す一般教書演説を行い「無法者国家」を最大の脅威と規定、「イラクの武装解除に必要なら、米国の総力を挙げて戦い、勝利するだろう」と強調。そしてパウエル国務長官は2月5日、国連安保理でイラクの大量破壊兵器をめぐる「組織的な隠ぺい工作を裏付ける証拠」を暴露し、優柔不断なイラクを追いつめた。イラク問題は昨年9月の「ブッシュ・ドクトリン」の試金石となっており、今後、国際秩序がどのように形成されるか、韓半島情勢の行方にも大きな影響を与える。それだけに、日本は米国支援を強力に進めていくべきだ。

 ブッシュ大統領は一般教書でイラク問題について次のように演説した。
「12年前、イラクのサダム・フセイン(大統領)は延命のためすべての大量破壊兵器の廃棄に同意するもその後、彼は合意に違反し、3カ月前に国連安保理は武装解除の最後の機会を与えたが、彼は国連や国際世論を完全に侮蔑している」「米情報当局者は、イラクがサリンやマスタードガス、VXガスを計500トン製造できる物質を保有すると推定している」「フセインは生物・化学兵器を廃棄したとの証拠を示さない。武装解除を行うどころか欺いている。情報筋などから得た証拠は、フセインがテロ組織アルカイダのメンバーを含むテロリストを支援し、保護していることを示す。秘密裏に、彼はテロリストに隠匿した兵器を提供することができる」「抑圧されたイラク国民へ。あなた方の敵は国の周囲にいるのではなく、国を支配している者が敵だ。われわれは国連で協議するが、フセインが完全に武装解除しないなら、連合を率いて彼を武装解除する。米国民は決意に満ちた国民であり、あらゆる試練に立ち向かってきた。強力な国である米国は、征服を目指さずに力を行使し、見知らぬ人たちの自由のために犠牲を払う」(世界日報1月30日付など)。
 さらに同大統領は「脅威が差し迫ったものになるまで、行動してはならないと言う人々がいるが、いつからテロリストや暴虐者が攻撃の前に丁寧に知らせてきたことがあるか」と批判、「この脅威が完全かつ突然に出現することを許してしまえば、すべての言葉もすべての非難も遅過ぎる。サダム・フセインの正気や自制を信頼することは戦略でも選択肢でもない」と強調した。
 この一般教書演説を受けてパウエル国務長官は2月5日の国連安保理で、米国がこれまでに収集した情報を提示し、大量破壊兵器保有など安保理決議への違反を続けていることを詳細に説明。
 同長官が提示した情報は偵察衛星による写真やイラク軍士官の通信記録などで、通信の傍受記録ではイラクの士官らのアラビア語による会話が録音されている。このうち2~3週間前に録音されたものには、通信を傍受されるのを恐れる士官が「無線では神経ガス物質に言及するな」と別の士官に指示。また衛星写真の中には、化学物質の監視機器や汚染除去のための特殊車両などが査察直前にすべて撤去された様子が含まれていた。
 これら「証拠」からパウエル長官はイラクへの疑惑がさらに深まったとし、現状では査察は機能せず、武力行使以外には武装解除は無理だとの見解を国際社会に訴えた。
 これに対して英国は同調し、ロシアも米国支持に傾いているとされる一方、仏独はあくまでも国連査察の継続を主張し、安保理有力国の見解は一致していない。
 米国が提示した「証拠」を基に、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長らが2月8、9日にバグダッドを訪問し、イラクに査察全面受け入れを説得したが、イラクの態度は煮え切らず、安保理の査察団報告(2月14日)を受けて、いよいよ武力行使への判断が下されることになる。
 今やイラク攻撃は秒読みに入ったといえよう。むろん、イラクが国連決議を完全に受け入れ無条件査察を行うことを決めれば平和的解決もあり得る。だが、フセイン大統領が米国が認める平和決断を下す可能性はきわめて低いといえよう。
 ここで見落としてはならないのは、イラク問題は21世紀の国際秩序構築の試金石になっていることだ。米国にとっては「ブッシュ・ドクトリン」が口先だけで終わらず実行に移したことが問われることになる。
 周知のように「ブッシュ・ドクトリン」はブッシュ大統領が昨年9月に打ち出したもので、正式名は「国家安全保障戦略」。今後の国家の安全保障が冷戦時代の国家対国家の対称型だけではなく、アルカイダといった国際テロ集団から国家国民を守る非対称型の防衛戦争もあり得るとの立場から、従来の対脅威戦略から「予防」と「先制攻撃」を重視しているのが特徴だ。
 今回の一般教書演説ではブッシュ大統領は「悪の枢軸」との表現を使わず「無法者政権」としたが、こうした無法者政権の脅威に対抗して核使用も含めた先制攻撃も辞さないというのが「ブッシュ・ドクトリン」だ。すでに国際テロとの長期戦を視野に入れて国土防衛体制を見直し、今年1月から新たに「国土安全保障局」をスタートさせた。一般教書では、これに加えてあらゆる脅威情報を集めて分析する「テロリストの脅威集積センター」を創設するよう指示している。
 昨秋の中間選挙で共和党が上下両院を制したことで「ブッシュ・ドクトリン」は加速しているのだ。イラク攻撃が始まれば、「先制攻撃」の最初の試みになるわけだ。
 ブッシュ大統領は一般教書演説で北朝鮮問題については「韓半島では、抑圧的な政権が恐れと飢餓の下で国民を支配している。1990年代を通じて、米国は北朝鮮が核兵器を持たないようにする交渉の枠組みに頼ってきた。われわれは今、北朝鮮の体制が世界を欺き、核兵器の開発を行っているのを知っている。米国と世界は脅迫に屈しない」と強調した。
 その上で「米国は日韓両国や中ロなど地域の各国と協力して、平和的な解決を図る。そして、北朝鮮政府に対し、核兵器(の保有)は単に孤立と経済の沈滞を招くだけだと示す。北朝鮮の体制は、核の野望を放棄した時のみ、世界から尊敬を得る」と述べた。北朝鮮は核放棄を行わない限り「ブッシュ・ドクトリン」が発動されると覚悟しておかねばならない。
 いずれにしてもイラク問題は国連を軸にした平和交渉がこれまで機能しなかったことを意味している。国連安保理が2月の一連の会議でイラクの武装解除ができなければ、米国が「ブッシュ・ドクトリン」に基づくイラク攻撃は避けがたいといえる。
 ここで留意しておくべきなのは、韓半島情勢も同じ構図下にあるということだ。北朝鮮が国際社会の要求を受け入れなければ、有事があり得るのだ。だからこそ日本は北朝鮮に断固たる決意を示すためにも米国のイラク対応策に歩調を合わせる必要がある。優柔不断の態度は日本の国益を損なうことになるからだ。

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