国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1896号 (令和8年4月1日)

長崎12歳少年殺人凶悪事件「家庭崩壊」「道徳軽視」のツケだ

思想新聞2003年7月15日号【1面TOP】

青少年健全育成の法整備を

遺体発見現場の立体駐車場には花が手向けられている(6月30日、長崎市=産経)

 長崎市で12歳の中学1年男子が4歳の男児を誘拐し殺害した事件は、わが国の少年犯罪の凶悪化、低年齢化を一層、浮き彫りにした。刑法で犯罪が問えるのは14歳以上であるため、この少年は「触法少年」として児童相談所から家庭裁判所に送致され、処分が決められる。おりしも沖縄県北谷町でも13歳の中学2年生を含む4人の中学生らが中学2年生をリンチ殺害する事件が勃発している。97年に神戸市で発生した中3男子(14=当時)による連続殺人事件以来、少年犯罪への対策が叫ばれ、少年法が一部改正されたものの、抜本的な対策の手は打たれずじまいだった。今回の少年事件は「家庭崩壊」と「道徳倫理の軽視」のツケといえる。改めて青少年健全育成の法整備の重要性が指摘されている。

 長崎市北陽町の幼稚園児、種元駿ちゃん(4つ)を誘拐し殺害したとして長崎署捜査本部は7月9日、市内の中学1年の男子生徒(12)を補導し、児童福祉法に基づき誘拐・殺害の非行事実を長崎県中央児童相談所に通告。同相談所は少年を家庭裁判所に事件として送致した。家裁は少年の心理状態などを調査して、自立支援施設に入所させるかどうかを判断する。
 同少年は駿ちゃんを家電量販店で誘拐した後、市内の駐車場で全裸にしたうえ20数mの屋上から突き落とすという残虐な方法で死亡させた。
 この事件は12歳という低年齢による犯罪であることに注目が集まっている。最近の少年犯罪の低年齢化を裏づけているからだ。刑法(41条)では刑罰の責任年齢を14歳以上としており、13歳以下の少年は刑罰対象から除外するばかりか、少年法の対象にすらならない。つまり「少年」ともされないのだ。これは善悪を判断する能力が未熟と見るからで「触法少年」と呼ばれている。
 だが、触法少年による犯罪は増加の一途を辿っている。警察庁によると昨年1年間で補導された触法少年は実に20477人(前年比2%増=410人増)に上る。このうち13歳が13400人と最も多く、ついで12歳が約3500人。殺人による補導は3人もいた。
 最近の14歳未満の少年による殺人事件としては、▽03年7月=沖縄県北谷町で13歳の少年が加わった少年ら4人が中学2年男子をリンチ殺害、▽02年4月=岩手県盛岡市で10歳の小学5年女児が生後3カ月の男児を殺害、▽01年4月=兵庫県尼崎市で11歳の小学6年男児が母親を殺害――などが挙げられる。もはや14歳未満の殺人事件は珍しくない上、前述のように触法少年が増加しているのだ。
 少年犯罪の低年齢化に対応するため平成13年4月に少年法が改正され、刑事処分の適用年齢が16歳以上から14歳以上に引き下げられた。だが、触法少年については手直しされなかった。こうしたことから刑事罰対象年齢を下げるよう求める声が強まっている。
 第一に、被害者側の気持ちとして刑罰の対象にならないことが許し難いからだ。
 駿ちゃんの両親は少年補導後に「犯人が中学生ということで刑事事件として罪が科せられないということは頭の中で分かっていますが、心が煮えくり返り、中学生といえども極刑に処してもらいたい心境です。このような事件で加害者が保護され、被害者が苦しむことのないように少年法が改正されることを願います」とコメントしている。
 第二に、刑罰対象にならないことで真相究明が不十分に終わりがちで、被害者も国民も納得いかぬまま事件が闇に葬られる可能性が高いからだ。
 今回の場合も捜査本部は9日、少年を補導し、児童相談所に通告。同相談所が警察署に一時保護を委託し、初めて警察署で任意の事情聴取で事実関係を調べ、翌10日には少年は同相談所に送致されている。通常の刑事事件のような真相究明はほとんどなされない。同相談所は事件の重大性から家裁に送致したが、家裁での調査内容はプライバシー保護を理由に公表されないのが通例だ。つまり真相がいっさい明らかにされない。
 第三には触法少年が被害者側と向き合って反省する機会が全く持てないからだ。改正少年法によって被害者側は被害感情や事件に対する陳述ができるようになり、審判結果の通知も受けることができるが、審判の傍聴は認められていない。触法少年の場合はこうした機会はいっさいない。これでは被害者側が納得できないし、加害少年も被害者側と向き合って自ら行った行為を反省する機会は得られない。
 こうしたことから「年齢制限を廃止し凶悪性や重大性により身柄の拘束もあり得る弾力的な法律が望ましい」(土本武司・筑波大名誉教授)「重大事件については年齢に関係なく事実認定を行い、被害者側に情報を公開すべきだ」(武るり子・少年犯罪被害者当事者の会代表)といった声が出されている(読売7月10日)。
 刑罰対象を下げる(刑法及び少年法改正)ことは、被害者のみならず触法少年の更正のためにも必要と言える。同時に14歳未満に刑罰の責任能力がないというなら「監護教育の義務を負う」(民法820条)という「親権を行う者」(長崎事件では両親)の責任が問われなくてはならない。米国では親に刑罰を科す州もある。行った行為の償いを誰かが果たさなければ社会正義が保てない。
 以上は事件の結果に対する償いの問題だが、なぜこうした少年凶悪事件が起こるのか原因面でも解明が不可欠である。
 第一に、家庭の問題だ。神戸事件では少年が異常な行動を起こす主原因を「親の愛情不足」と指摘された。家裁の裁判官や調査官ら01年にまとめた凶悪事件を起こした少年の犯罪前の心理調査では、親子関係の歪さが際立っている。低年齢の少年であればあるほど家庭問題を抜きに論じられない。近年の少年犯罪の増加が離婚率の上昇と比例していることを忘れてはならない。家庭崩壊のツケが凶悪少年事件多発の背景に横たわっている。
 第二に、学校教育の問題だ。長崎事件の直後、少年の通っていた中学校では全体集会を開き、校長が「人の命は地球より重い」などと命の大切さを説いた。だが、戦後教育は宗教教育をないがしろにし、唯物教育を中心に据えて真の命の大切さを教えてこなかった。教育基本法改正問題でも宗教教育を棚上げにしている。こうした宗教的情操教育の不在、道徳軽視のツケが少年凶悪事件をもたらしているのだ。
 第三は、社会環境の問題だ。伊藤隆二・帝京大教授は、最近の子供は善悪の判断が不十分なまま感情が爆発する傾向が強く、その背景には「ゲームとビデオの強い刺激の影響がある」と指摘(読売7月10日)、小田晋・帝塚山学院大教授は「ビデオやインターネットなどの過剰な情報も背景にあるのではないか。読んでいたマンガや、どんなゲームが好きだったかなど、少年の情報環境が今回の行動に影響を与えているだろう」と述べている(産経7月10日)。
 こうした背景を直視すれば、青少年健全育成の総合的な法整備が不可欠といえるだろう。

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